元自民党政調会長亀井静香かめい・しずか/1936年生まれ。東京大学卒業後、79年、衆院選に初当選。運輸相、建設相、自民党政調会長を務めたが2005年、郵政民営化に反対し、自民党を除名処分となり、国民新党を結成。現在は無所属 (c)朝日新聞社 @@写禁
元自民党政調会長
亀井静香

かめい・しずか/1936年生まれ。東京大学卒業後、79年、衆院選に初当選。運輸相、建設相、自民党政調会長を務めたが2005年、郵政民営化に反対し、自民党を除名処分となり、国民新党を結成。現在は無所属 (c)朝日新聞社 @@写禁

 自民党が今国会での成立を目指している安保法制。しかし、自民党OBで安倍首相と同じ憲法改正論者である、元自民党政調会長の亀井静香氏が反対の声を上げる。

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 日本記者クラブで山崎拓氏、藤井裕久氏、武村正義氏と6月12日、安保法案に反対する記者会見をしたが、きっかけは、このメンバーに古賀誠氏も加えた5人で食事をしたことだった。その時、「日本は戦争で負けて以来、最大の危機に直面している」と意見が一致したよ。古賀氏はテレビで安倍政権批判をぼんぼんやってはいるが、正面からやる記者会見は出ないという彼なりの戦略で当日は欠席した。安保法案は憲法違反。これは誰が考えても当たり前のことだ。

 なのに、自民党内からほとんど反対の声があがらないことを危惧している。昔は地元のしっかりした支持の上に乗って当選していたが、今は「風に乗っただけ」という国会議員が多い。不安だから肩書がほしくなり、党の方針に反対しない事なかれ主義が横行しとるんだ。俺なんて、大臣を3回も断っているけど、今の議員はそういうことができない。

 野党の追及も甘い。「リスクがある」という言い方では国民にちゃんと伝わらない。集団的自衛権の行使を容認すると、「戦死者が出る」とはっきり言わなければならない。戦闘に加わろうとしているんだから、死なないほうが不思議なんだよ。「リスク」なんて生やさしいものじゃないんだ。戦前の日本へ戻してはいけない。安倍さんからは電話もかかってくるし、俺もかけることがある。話の中でも感じるが、安倍さんは本来、保守本流ではない。対米追随一辺倒の政治家ではなく、言葉は悪いが「ムード右翼」。日本古来の民族性や伝統をもっと大事にしようという思いが強い。けれど今、結果として、米国追従になってしまっていることが、残念だ。我々の会見後、菅義偉官房長官が「まったく影響はないだろう」と語ったが、それは強がりにすぎない。安保法制が国民から支持されなければ、政権はもたない。必ずダメになる。そうすると、ますます憲法改正はできなくなる。

 私も安倍首相と同じ憲法改正論者。日本人の魂がこもった自家製の憲法をつくらなければならないと考えている立場として、なんとも皮肉なことだと感じる。

(本誌・西岡千史、牧野めぐみ、古田真梨子)

週刊朝日 2015年7月3日号