昨年の優勝したソフトバンクに対しても接戦を見せる東尾修氏の古巣・西武ライオンズ。その立役者である大阪桐蔭トリオを東尾元監督は絶賛する。

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 私が現役時代を過ごし、監督も務めた西武ライオンズが投打にチームとしての形ができてきた。同一リーグとの対戦は2巡目に入ったが、昨年の日本一軍団であるソフトバンクに福岡で2勝1分と勝ち越すなど、接戦でも負けない姿を見せ始めている。

 本物と言えるまでには、まだしばらく経過を見る必要があるが、上位に進出するために、私が必要条件と考えている救援陣に安定感が出てきている。抑えの高橋朋己は開幕前からある程度はやるだろうと思っていたが、そこにセットアッパーの増田がしっかりと役割を果たし、岩尾らが7回を担えるようになってきた。そうなると、先発は6回まで試合を作れればという精神的なゆとりが生まれる。さらに長いイニングを投げられるようになるだろう。エースの岸が5月には復帰するだろうし、戦力の上積みも期待できる。

 そして打線だが、浅村、中村、森の大阪桐蔭トリオの破壊力は他球団にとって脅威だ。チーム総得点の6割近い打点を3人で挙げている。一つの球団に、同じ高校出身者が中軸に3人入るなんてこと、過去の歴史で記憶にないな。年齢は違うけど、身近で参考にもなり、刺激もし合える。3人がそろって不振に陥ることもないだろうし、田辺監督も年間を通じて得点力を計算できるだろう。

 打順については、開幕から1番から6番まで固定している。固定して戦うことで、前後の打者と相互理解が深まって、打順の役割、連携もより深められる利点がある。ただ、私は森を5番に入れ、大阪桐蔭トリオでクリーンアップを形成したほうが、より相手にプレッシャーをかけられると感じる。現在、5番を打つメヒアの不振は深刻だ。昨年途中加入で本塁打を量産したような体のキレはないし、思い切りバットを振る状況にもなっていない。何より、右打者が3人並ぶよりも、左打者の森をはさんだほうがいい。4番の中村が好調な現状を考えると、メヒアが5番だと、今後は徹底的に中村との勝負を避けられるだろう。

 森については、捕手としての育成をどうするかという球団の将来を見据えた問題もある。だが、彼の打撃力、精神力は素晴らしい。ソフトバンク戦でも前日に4打席連続三振したこともあったけど、翌日の試合で迷いなく振り切っていた。捕手の守備で余計な心配を増やすよりも、今は打撃力を磨き続けるほうが、彼自身のプロとしての将来も開ける。捕手は西武第二球場で行われるイースタン・リーグの試合で経験しながら、1軍でDH起用を続ける形でいい。昨年も捕手として起用したときには、打撃に頭がいっていない面が見受けられた。森本人がどう考えるかだが、プロ2年目で、まずは打撃で年間通じて戦うことが将来につながると思うよ。

 あとは今、2軍にいる選手たちが、高いモチベーションを持って戦うことだ。長いペナントレースでは必ずどこかに穴はできる。その穴を埋めて余りある活躍をするイメージを常に持つこと。ドラフト1位の高橋光成あたりは、プロとして戦う体力と自信を身につけて夏あたりに1軍に上がってきてほしいよな。

 開幕前に私は古巣への敬意を表して3位という順位予想をしたが、白星を積み重ねることでチームとしての自信も深まるはずだ。

週刊朝日  2015年5月22日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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