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 おなかに開けた穴から栄養を入れて体力を回復させる「胃ろう」をつけている人は受けられる介護サービスの範囲が限られる場合があり、家族にかかる負担も大きい。

 介護保険法改正で、12年4月から一定の研修を受けた介護職員は痰の吸引や経管栄養の投与ができるようになったが、研修を受けないと禁じられている。このため、いざ介護保険のサービスを利用しようとしても、「胃ろうから栄養を入れられる職員がいない」という理由で、デイサービスに通えなかったり、ヘルパー派遣を断られたりするケースが後を絶たない。

 在宅介護を担う人たちは、食事介助にどれほどの負担を感じているのか。医療法人社団「永生会」(東京都八王子市)の言語聴覚士の遠藤友紀人さん(41)は、口腔リハビリの専門家として、家族の気持ちにも寄り添う。週1回訪問する田村洋志さん(72)は、急性ウイルス性脳炎の一つ「ヘルペス脳炎」を患って17年。食べ物をのみ込めないので気管切開し、発声するための管をつけている患者だ。

 たとえば遠藤さんは、田村さんののみ込みにかかわる筋肉をほぐし、嚥下時の呼吸や発声を確認しながらプリンを食べさせる。のどを鍛えるために早口言葉を言わせたり歌わせたりすることもある。日々の食事介助は妻の孝子さん(65)で、毎食ごとに、経管栄養の缶の中身を点滴の袋へ移し替えては鴨居からつるす。

「夫の『食事』が早く終わらないかとイライラして当たってしまうこともありました。夫は固く握りしめた手を震わせて、怒りに耐えているようでした。体が思うように動かないもどかしさ、食べられない悔しさを本人がいちばん感じていると気づけたとき、ようやく優しく接することができるようになったんです」

 遠藤さんが言う。

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