岡田:先日、来日したドイツのメルケル首相とその議論をしました。メルケル首相は「NATOに加盟しているので責任を果たさなければならないと考えました。大事なのは、ドイツが軍を出す必要性をきちんと国民に説明することです」とおっしゃっていた。私が話したのは、ドイツにはNATOという集団安全保障の枠組みがあるが、日本は単独で決断するか、日米同盟の中でやるしかないということ。ドイツも単独で派兵したら、周辺国との軋轢が生まれたかもしれない。状況がだいぶ違うんですよ。

田原:安倍首相には日米安保条約は日本が危機のときに米国に助けてもらうだけの片務条約で、これを双務的な条約に近づけたいという思いがあるんじゃないか。

岡田 それでは沖縄の基地負担は何なのかと。日本はお金も出しています。日本の基地がなくなったら、米国もアジアでのプレゼンスを失う。片務的と考える必要はないと思います。

田原:岡田さんは日米安保のあり方を変える必要はないと考えていますか。

岡田:米国はいちばん大事な同盟国であり、同盟関係を深めることは必要です。しかし安倍首相のように、今までの国内での議論や考え方を一挙に飛び越えることは許されない。また、いろいろな意味でストッパーを入れておかないと、日本は振り回されてしまう。ストッパーになるのは、やはり憲法です。憲法があるから、例えばイラク戦争に兵を出せと言われなかったわけです。

田原:イラクには「水汲み」に行っただけで戦わなかった。それが憲法の歯止めがなくなると、ずるずると引きずられる可能性があると。

岡田:米国から要請されたら、政策判断として「できません」と言う余地は日本にはあまり多くないと思うんです。オバマ政権はある程度、武力行使に抑制的ですが、ブッシュ政権はまったく違ったわけですから。

(構成 本誌・小泉耕平)

週刊朝日 2015年4月17日号より抜粋