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 一家の“大黒柱”となったとまどいや家族に対する思いを語ったエッセーが、多くの人の共感を得ている小島慶子さん。林真理子さんとの対談でアナウンサーになった理由を語った。

*  *  *

林:小島さんの性格だったら、アナウンサーではなくドラマやドキュメンタリーをつくるディレクターを目指してもよかったんじゃない?

小島:ドキュメンタリーをつくる人になりたかったんです。「NHK特集」をつくる人になろうと思って、高1のときに調べたら「難しいぞ」と思ったんです。

林:どうして難しいの?

小島:男の人と肩を並べて入局しても、ごく一部の人しか「NHK特集」には携われないし、NHKにはいろんな子会社があるって書いてあって。そんなの女の私にできるわけがない、女の私でもこの世界に入れそうなのはアナウンサーだと思ったんです。15、16歳のときに。

林:「私、けっこうイケてる」という自信はあったんですか。

小島:高校2年生のときに修学旅行の集合写真を見たら、「私、意外と整ってる? イケるんじゃない?」ということを発見しまして(笑)。同級生マーケットじゃないところでウケるんじゃないかと……。

林:男ウケ?

小島:おじさんウケ(笑)。それまで自分の容姿が現代的じゃないのがイヤだったんですけど、ちょっとやぼったいぐらいの価値観の中だったら、美人として扱ってもらえるんじゃないか、秘書とか女子アナだったらいけるんじゃないかと思ったんです。

林:就職活動のとき、フジテレビは受けたんですか。

小島:もちろん受けましたよォー(笑)。カメラテストで落ちました。

林:フジテレビ的じゃないですよね(笑)。女子アナって次々とフリーになっていくけれど、限られたパイを分け合うって大変なことですよね。

小島:大変だと思います。私は局アナとしてパイの争いに完全にあぶれたので……。

林:自分で違うパイを焼くしかなかった?

小島:永遠に勝てないであろう土俵をおりて、誰もいない土俵に行って独り相撲をとっていたら、それが話題になったという感じなんです。退社するときは、「アナウンサー廃業だ」と思って、「フリーアナウンサー」じゃなくて「ラジオパーソナリティー」を名乗ったんです。あんなに競争率の高いきらびやかな世界で生き残るのは大変だなと思って。

林:小島さんみたいな生き方、みんなうらやましいんじゃないかな。カッコいいですよ。

小島:ありがとうございます。ただ結果としていま楽しくお仕事をさせていただいてますが、人生をやり直せるとして、あの屈折した20代と、そうでない20代のどっちを選ぶかと言われたら、屈折してないほうを選びます。しんどかったですね。

週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋