中谷美紀が怪演 ドラマ『ゴーストライター』は愛憎が面白い 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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中谷美紀が怪演 ドラマ『ゴーストライター』は愛憎が面白い

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週刊朝日#ドラマ

 タイトルを見てあの騒動を思い出す、ドラマ『ゴーストライター』をドラマ評論家の成馬零一氏が批評する。

*  *  *
 フジテレビ系で火曜夜9時から放送されている『ゴーストライター』は、人気女流小説家とそのゴーストライターの女性の愛憎劇だ。

 遠野リサ(中谷美紀)は、30代にして出版業界に君臨するベストセラー作家。しかし近年はスランプに陥っており、人気は低迷気味。また、認知症の母親と反抗期の息子を抱えており、仕事と家庭、両方の面において崩壊の足音が近づいていた。

 一方、川原由樹(水川あさみ)は結婚を間近に控え、1年間の期間限定で昔からの夢だった小説家を目指して新人賞に応募したが、すべて落選。しかし、原稿を持ち込んだ出版社の編集者からリサのアシスタントの誘いを受けて、引き受けることになる。さらに、リサが依頼された、急逝した作家の追悼全集の刊行に合わせた追悼文を試しに書いたことがきっかけで、リサの小説のプロットを書くことに。

 由樹はリサから厳しい添削を受けることでみるみる才能を開花させていき、「小説駿峰」の編集長・神崎雄司(田中哲司)に、自分の小説の出版と引き換えに、リサの原稿を全て請け負うようにといわれる。だがやがて、良好に見えた女性二人の関係は、由樹の立場が強くなることで、じわじわと逆転していく……。

 正直、初めて見た時は、粗い話だなぁと感じた。おそらく神崎は、幻冬舎の社長・見城徹あたりがモデルなのだろうが、今の出版業界の実情を多少でも知っていれば、こんな金と陰謀が渦巻く華やかな世界に描けるはずがない。

『ファーストクラス』(フジテレビ系)のファッション業界の描写は、楽しんで見られたが、一応ライターとして、知り合いをたどれば文芸誌の編集者や小説家にぶちあたるような環境にいるため、どうしても気持ちが萎えてしまう。

 しかし、そこさえ割り切れば、こんなに面白いドラマはない。まるで漫画『ガラスの仮面』のような女同士の熾烈な戦いが堪能できる。

 何より素晴らしいのはリサを演じる中谷美紀の怪演だろう。女吸血鬼のような痩せた佇まいは、見ていて痛々しく、今にも崩れ去りそうなリサのギリギリの姿が伝わってくる。

 脚本は橋部敦子。『僕のいた時間』(フジテレビ系)などの難病モノや、 格差社会の中で働く若者の姿を描いた『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)など、リアル志向の作品が多い橋部にしてはケレン味の強い娯楽作となっている。

 企画は『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)などのプロデューサーとして知られる増本淳。増本の作品には細かいリアリティを超えたドラマでしか描けないグルーヴ感がつねに存在する。本作のケレン味も増本のカラーではないかと思う。

 もちろん、企画の発端となったのは、昨年話題となった音楽家の佐村河内守氏のゴーストライター騒動だろう。佐村河内氏は、全聾(ぜんろう)であると偽り、音楽家の新垣隆氏にゴーストライターとして作曲を依頼することで“現代のベートーベン”として活躍していたが、新垣氏に真相を暴露されたことで、すべてを失った。

 あの事件が、多くの人々に注目されたのは、“騙す”という行為の面白さもさることながら、作家とゴーストという、佐村河内氏と新垣氏の関係に“深い愛憎”を見出したからだろう。

 お互いを必要としながらも憎み合う愛憎劇を、本作がどこまで描けるのか? 最後まで見届けたい。

週刊朝日 2015年2月20日号


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