もどかしい株式市場を尻目に、ほぼ一本調子で上昇してきたREIT(不動産投資信託)市場。昨年10月末に行った日銀の追加の金融緩和でもその枠が300億円から900億円に大幅に拡大された。このように価格の上昇が顕著なREITだが、本来の魅力は高水準の分配金にある。

 まず分配金利回りを理解しよう。ピンとこなかった読者のために少し解説したい。個々の銘柄ごとに価格が異なるため、1口当たりの分配金の金額で優劣を比較するのは乱暴だ。そこで、預貯金などのように利回りを換算し、その数値をモノサシとして投資判断する。

 具体的には、「1口当たりの分配金÷1口当たりの時価」という式から分配金利回りを算出する。現状、J‐REITのそれは最も高い銘柄で4%台に達しており、最も低い銘柄でも2%台半ばと、ゼロ同然の預貯金をはるかに凌ぐ水準に達している。しかも、ここ数年は相場が強いことから、株式のようなキャピタルゲインまで期待できるわけだ。

 果たして、今後もJ‐REITへの人気は続くのか。REIT分析の第一人者であるみずほ証券経営調査部の石澤卓志上級研究員は次のように指摘する。

「都心におけるオフィスの空室率は低下傾向が続き、足元では5%を切っています。経験則的には、賃料が上昇に転じ始める目安となる水準。実際、すでに昨年11月ごろからその兆候がうかがえます。株式相場は不安定ですし、史上空前の水準まで利回りが低下した日本国債にも手を出しづらい。相対的に優位に立つJ‐REITが消去法的に選ばれる展開が続くでしょう」

 ネット上の投資情報サイト「JAPAN‐REIT.COM」にデータを提供するアイビー総研代表取締役の関大介さんもこう予想する。

「東証REIT指数は2000ポイントからさらに10%程度の上値余地がありそうです。原油安に伴う物価下落を踏まえて日銀が量的緩和の第3弾を実施すれば、その確率はかなり高まってくるはず。実施しなかったとしても、相場の下押し圧力はかなり小さい」

 さらに、野村証券エクイティ・リサーチ部エグゼクティブディレクターの荒木智浩さんも強気の姿勢だ。

「もともと賃貸物件の収益は安定的であるうえ、J‐REITは配当可能な利益の90%以上を分配金に充てるスキームになっています。着実に分配金が得られることへの信頼性が高いことから、投資信託や地方銀行をはじめとする金融機関も盛んに購入しています」

週刊朝日 2015年2月20日号より抜粋