エビ中の「ロボサン」 ドラマとしてはハチャメチャ、でも… 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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エビ中の「ロボサン」 ドラマとしてはハチャメチャ、でも…

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週刊朝日#ドラマ

 ドラマ評論家の成馬零一氏は、あるアイドルグループは既存のルールに縛られやすいテレビでも面白さを出し切れているとこう語る。

*  *  *
 AKB48のブレイク以降、女性グループアイドルが次々と生まれ、音楽業界を席巻している。

 その勢いは、テレビ業界にも波及し、アイドル主演のテレビドラマやバラエティ番組も深夜枠を拠点にしてポツポツと増え始めている。

 しかし、ライブやインターネットの配信で好き勝手にやっていたときは面白かったのに、いざ、テレビに進出すると、既存のルールに縛られてしまい、アイドルが持っている面白さを引き出すことができずに消化不良に終わることが多い。

 そんななか、自分たちのやり方を貫くことで成功しているテレビドラマが、テレビ東京系で金曜深夜に放送中の『甲殻不動戦記 ロボサン』だ。

 主演は私立恵比寿中学(以下、エビ中)。今や、AKB48に次ぐ人気アイドルとなりつつある、ももいろクローバーZの妹分にあたる8人組のグループアイドルだ。

 舞台は近未来。謎の宇宙生物の襲来により絶滅の危機に瀕していた人類だったが、そこに謎の巨大ロボットが現れて、宇宙生物を撃退する。

 その後、ロボットは活動を停止。地球は束の間の平和を謳歌していたが、ロボット工学を研究する橘教授(甲本雅裕)は将来の危機に備え、ロボットの操縦方法を調査し続ける。一方ロボットの内部は、いつの間にか8人の女子中学生のたまり場となっていた。

 物語は、女子中学生の他愛のない会話と、謎の地球外生命体と戦う巨大ロボットをどうやって動かすのか、という地球規模の壮大なドラマが同時進行していく。

 選ばれた少女たちが巨大ロボットを操縦して地球外生命体と戦うというと、『新世紀エヴァンゲリオン』等のロボットアニメを彷彿とさせる。巨大ロボットが廃墟で動き回る場面は、東映アニメーションによる最新のVFXで描写されて見応えも抜群。

 とはいえ、ドラマの大半を占めるのは、女の子たちのおしゃべりで、その内容は、買い物をした際に小銭が増えすぎたのが嫌だから、千円札にまとめられないか? とか、冷蔵庫の中のプリンを食べたのは誰か? といった、一見バカバカしいことばかり。

 それでも当の女の子たちは一生懸命で、友達との人間関係や、好きな先輩への片想い、親との不仲など、半径5メートル内での悩みを抱えているのが伝わってくる。そんな“女の子たちの日常”と、“人類の危機”が、巨大ロボットの操縦を巡って一瞬だけシンクロするのが本作の面白さだ。

 エビ中は自分たちの芸能活動を「キング・オブ・学芸会」と提唱している。歌も踊りも演技もまだまだの成長過程にある彼女たちの姿を、ファンは娘の成長を見守るように、現在進行形のドキュメンタリーとして楽しむ。それは洗練された演技や歌を鑑賞することとは違う、アイドルならではの魅力だ。自分たちの活動を学芸会と唱えるエビ中は、技術に規定されないアイドルの面白さを、じつは誰よりも理解しているのだ。

 多くの視聴者は、彼女たちの演技を決してうまいとは思わないだろう。そもそも、普通の映画やドラマのようにうまく演じるつもりがまったくないようにすら感じる。それがつまらないかというと、そんなことはない。中でも、スーさんを演じる安本彩花の存在感は、うまい下手を超えた破壊力があって目が離せない。

 ドラマとしてはハチャメチャでも、「キング・オブ・学芸会」としてはこれが、正解なのだ。

週刊朝日  2014年12月19日号


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