金融緩和の決定後、記者会見する黒田日銀総裁 (c)朝日新聞社 @@写禁
金融緩和の決定後、記者会見する黒田日銀総裁 (c)朝日新聞社 @@写禁

 10月31日、日本銀行は追加の金融緩和を決めた。昨年4月の“異次元”の緩和に続く“超次元”ともいえる緩和を受け、日経平均株価は一時1万7千円台まで急騰。7年ぶりの高値となった。今後の日本株や為替、景気はどうなるのか。本誌は、「取材一切お断り」のプロたちに緊急取材、誌上座談会をお届けする。

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絶対匿名、プロ4人のプロフィル
Aさん(30代) 某通信社の証券担当記者。兜町の人脈は幅広い
Bさん(30代) 準大手証券の若手ストラテジスト。相場分析、銘柄発掘に定評
Cさん(30代) 大手外資系証券アナリスト。在日歴10年以上のアメリカ人
Dさん(40代) 銀行系証券ディーラー。日々相場と格闘する相場師

――どうしてマーケットにそんなにインパクトがあるんでしょうか。

B:今回の緩和の規模が非常に大きかったからです。国債の購入額は従来の50兆円から80兆円、ETF(上場投資信託)は3倍の3兆円、J-REIT(上場不動産投資信託)も3倍の900億円に大幅に増やした。これは米国の第3弾の金融緩和(QE3)とほぼ同じ水準です。経済規模が米国の3分の1の日本で行うには異常に大きい。

C:もう、だれも経験していない世界に入ったね。

A:タイミングも非常に良かった。この時期の緩和は誰も予想していなかった。サプライズを演出するのが黒田東彦(はるひこ)日銀総裁はうまい。

B:日銀のある部隊は、金融機関に頻繁に電話でヒアリングしていました。「日銀はいつ緩和をすると思いますか」といったような質問内容で。マーケットの裏をかくために調査していたのかもしれませんね。

C:ディーリングルームにも日銀から電話がかかってきてたよ。やはり同じようなことを上司が聞かれていた。市場関係者が何を考えているかを把握しようとしている感じだった。

――短期的に株はどこまで上昇すると見ていますか。直近は上値が重いような気もしますが。

D:うちの注文を見る限りだけど、今は国内の年金と投信が利益を確定するため、怒濤(どとう)の売りを出している。

A:その売りが終われば、また買いが始まりますよ。外国人が主導して、少なくとも1カ月は突っ走るでしょうね。

B:年内は、リーマンショック前の2007年7月9日に付けた1万8261円を目指す展開になると見ています。

一同:(うなずく)

C:海外の短期筋のヘッジファンドからの問い合わせが非常に増えています。いま何を買うか準備をしている段階だと思う。

A:日本株で勝負を仕掛けてくる可能性は高いでしょうね。短期筋のヘッジファンドは、今年パフォーマンスがよくなかった。私の取材では、ほとんどの短期筋のヘッジファンドは、年の前半に米国景気の回復を見込んで、「米国債券売り」の大きなポジションを組んでいた。ところが、米国を寒波が襲って景気は失速、予想外に米国債券の価格が上昇して、大損してしまった。今年のうちにどこかで取り戻さないといけない状況なんです。それが日本株になる可能性が出てきた。

C:私たちもそう見ています。外国人投資家は、安倍政権の不祥事、消費増税による景気の失速で、日本株に見切りをつけていた。しかし、大規模緩和でまた注目され始めているね。

B:とはいえ、政府は12月に消費税の10%への引き上げを決断しなくてはいけません。もし決まった場合は売りの号令になる。

A:その可能性はあるでしょうね。

C:私のお客さんの外国人投資家も、消費増税に賛成している人は少ない。景気が底堅くなるまで無理する必要はないですよ。4月の8%への引き上げは明らかにタイミングを間違った。

A:ですが、日銀がこれだけ緩和してるのだから大幅に下がることはありえない。上値は重くなるかもしれないけど、ETFの買いで、相場は底堅いと思う。昨年4月に第1弾の金融緩和を行った後、日経平均は1万4千円を回復した。それを下回ることはまず考えられない。下回ってしまうと、金融緩和の意味がなかったことになりますからね。何が何でもその水準は維持しようとするでしょう。

D:もはや政府が相場を作っていますからね。

週刊朝日 2014年11月21日号より抜粋