エボラ出血熱が疑われる患者が搬送された国立国際医療研究センター(東京都新宿区) (c)朝日新聞社 @@写禁
エボラ出血熱が疑われる患者が搬送された国立国際医療研究センター(東京都新宿区) (c)朝日新聞社 @@写禁

<羽田空港で微熱があるリベリアからの帰国男性エボラ出血熱感染かどうか検査へ>。10月27日午後7時半過ぎ、テレビでニュース速報が流れた。塩崎恭久厚生労働相は、エボラ出血熱への感染が疑われる40代男性の入国を公表したが、今回の件で日本にもウイルスが上陸する可能性が示された。

 しかし、エボラウイルスは感染力こそ強いが、感染するルートは血液や体液、吐しゃ物に触れるなど、極めて限られている。感染しても発症(発熱)しなければ人にはうつらない。リベリア人男性のケースも、彼の看病にあたった恋人などには感染していない。機内でも感染はなかった。

 アメリカでは早期発見による点滴治療や、感染者の血液からとった血清を用いた治療などが功を奏し、4人の感染者のうち、リベリア人男性以外は、全員回復している。先進国で治療した場合の致死率や、有効な治療法などは、今後、論文などで報告されるだろう。

 エボラ出血熱が日本に入ってくる可能性がゼロになる方法は一つ。西アフリカでの終息だ。

 WHO(世界保健機関)は10月24日、来年半ばまでに2種類のワクチンを量産する見通しを示した。ワクチンに詳しい国立感染症研究所ウイルス第1部の西條政幸部長によると、いずれも別のウイルスの細胞膜にあるタンパクを、エボラのタンパクに組み換えたもので、動物実験では有効性が示されているという。

「人での使用には、健康な人で安全性や有効性を確かめることが必要。WHOは来年半ばに量産すると公表していますが、それは通常では考えられないスピードです」(西條部長)

 ワクチンは西アフリカの、おそらくエボラ出血熱の患者を診る医療関係者に優先的に接種すると考えられる。これが日本で使えるようになるかは不明だ。

「ただ、日本では感染者が見つかっても感染対策がしっかりしているので、ワクチンが必要になるようなことはないと思います」(同)

 患者が出ても感染は広がらない。冷静な対応をと話すのは、立川昭二・北里大学名誉教授(医療史)だ。

「80年代後半、国内初のエイズ感染が神戸市で見つかったとき、神戸ナンバーの車を通さなかったり、神戸市へ行くのを制限したりした過去がある。エボラ出血熱の場合でも、感染者やその周辺に対して排他的にならないよう、注意しなければならないでしょう」

 厚労省はエボラ発生時の情報公開について、「個人情報などの公開範囲はWHO、諸外国の動きを見ながら対策を考えている」(健康局結核感染症課)としている。

 始まりはいつも突然である。

週刊朝日 2014年11月14日号より抜粋