尖閣諸島の魚釣島周辺を航行する中国海洋監視船と、警戒し追尾する海保の巡視船 (c)朝日新聞社 @@写禁
尖閣諸島の魚釣島周辺を航行する中国海洋監視船と、警戒し追尾する海保の巡視船 (c)朝日新聞社 @@写禁

 9月29日開会の臨時国会冒頭、安倍首相は中国との「対話路線」に切り替えると宣言し、徐々に改善される日中関係。だが首脳会談実現には大きなハードルが待ち構える。中国側は最近、条件として安倍首相の「靖国への不参拝宣言」と「尖閣問題が係争中と認めること」を突きつけたのだ。首相は今のところ、どちらも応じる姿勢を見せていない。

 日中関係に詳しい自民党ベテラン議員は「中国が条件を取り下げることはまずない。首脳会談の実現は難しい」と指摘する。

「安倍首相は8年前の第1次政権のとき、真っ先に訪中し、靖国参拝もしなかった。だから余計に今の中国政府は怒っている。厳しい条件を安倍首相に突きつけ、のめないなら首脳会談はしないという姿勢を貫くでしょう。ただ中国はAPECのホスト国なので、お情けで立ち話ぐらいしてあげる、というレベルです」

 中国に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は、会談実現の可能性は40%とみる。

「昨春、国家主席に就任した習近平(しゅうきんぺい)氏ですが、党内基盤が強く2期10年務めるのはほぼ確実。いま慌てて首脳会談をする必要はない。来年は戦後70年ということを考えると、厳しい姿勢を変えないのではないか。本格的な歩み寄りを見せるのは早くて来秋、それどころか2期目に入ってからでもいい、とすら思っているかもしれません」

 日本の経済界、とりわけ自動車業界は、首脳会談が遠のくことに頭を抱えている。ドイツ・メルケル首相や韓国・朴槿恵(パククネ)大統領はすでに習氏と緊密な関係を築いた。独フォルクスワーゲンは、中国での生産・流通体制を着々と整える。日中のすきま風でただでさえ後れをとっている中国市場で、ビジネス展開がより厳しくなってしまう。

「安倍首相は中国包囲網とか派手にぶち上げますが、どれも結果が出ない。そして突然、歩み寄りを始めるので、中国側は理解できないのです。長期的視野に立って外交をしているのか甚だ疑問」(富坂氏)

 ぶれた外交のツケは結局、国民に回ってくる。

週刊朝日 2014年10月31日号より抜粋