文筆家の北原みのり氏がブレア元首相夫人と安倍昭恵首相夫人の対談を聞き、夫婦の家事分担に対する姿勢の違いに衝撃を受けたという。

*  *  *
 9月12日、東京で「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」が開かれた。イギリスのシェリー・ブレアさん(夫は元イギリス首相)と安倍昭恵さんの対談は、ちょっと衝撃だった。

 自らの結婚生活を振り返りつつ、夫との家事分担について話をしたのだけど、「家事分担」の意味も度合いも、二人はまるで違うのであった。

 ブレア首相といえば、首相在任中に育児休暇を取った人だ。家事分担も何もあるまい。一方、昭恵さんの話は、こんな感じだ。

「主人は一緒に片付けをしてくれ、お皿洗いをしてくれたり、朝ゴミを出さないで置いとくと、ゴミを出しておいてくれます」

「主人」という言葉も哀しく響くけど、育児休暇を取ったブレア氏の前で、「ゴミ出してくれます」話は悪い冗談のように聞こえる。

 とは言っても、この手の話はよく耳にするものだ。私自身、どれだけ女友だちから聞いてきたことだろう。「彼がお風呂を洗ってくれる」「彼が掃除機かけてくれる」「夫がおむつを替えてくれる」などなど。どう返答していいのか非常に困る「自慢」である。一緒に暮らしてるなら当たり前じゃないの? 男が家事をするのって、そんなに“ありがたい”ことなの?

 ヘーベルハウスの「共働き家族研究所」のホームページを見ていると、男性の家事労働意識がよく分かる。男性が家事参加できるように、住宅の工夫をすることが提案されていて、その一つにランドリーサンルームがあった。曰く「いつでも誰の目も気にすることなくパパもお洗濯を引き受ける事ができます」と。人の目が気になるから洗濯を干せないって、侍か? そんな理由があるのか、と私は愕然とした。これじゃ、男が育休を当たり前に取るのは、まだまだ先の話だろう。

 2014年にOECDが発表した調査によれば、日本男性は1日平均約1時間しか家事をしない、とのこと。対して女性は約5時間である。私も風呂を沸かすだけ(家事時間約3秒)の日もあるので、家事をしない男を責める筋合いはないけれど、ゴミ出し自慢総理夫妻のもとで男女平等の道はえらく遠く見える。

週刊朝日  2014年10月10日号より抜粋

著者プロフィールを見る
北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

北原みのりの記事一覧はこちら