初公判を見ようと傍聴券を求めて長蛇の列ができた (c)朝日新聞社 @@写禁
初公判を見ようと傍聴券を求めて長蛇の列ができた (c)朝日新聞社 @@写禁

 自身の起訴事実は認めたものの、ともに逮捕された栩内(とちない)香澄美被告(37)の薬物使用は否定したASKA(本名・宮崎重明)被告(56)。精神医療センターでも入院仲間にそう語っているという。

「ASKAさんは栩内さんについて『全くのシロ。自分のせいで事件に巻き込んでしまい、本当に申し訳なかった』とすまなそうに話していました」

 本誌にASKA被告の近況をこう語ってくれたのは、自らの薬物体験を綴った『SPEED スピード』(文春文庫)などの著作がある作家・翻訳家の石丸元章氏だ。危険ドラッグへの依存を治療するため、千葉県のある精神医療センターに自主入院中、7月5日から入院してきたASKA被告と知り合ったという。その後、約50日間にわたって交流を持った。

 ASKA被告が病院の仲間たちの中に溶け込んでいった過程を石丸氏はこう証言する。

「最初は『これから治療を頑張っていきましょう』と私のほうから声をおかけしたんです。そうしたらなんと、ASKAさんが私の著作『SPEED スピード』を読んでくださっていたことがわかり、お付き合いが始まりました」

 それから、同じ境遇の人間が集まっていることで、ASKA被告はすぐに他の患者とも打ち解け、本音で話をするようになった。

「ASKAさんは言葉数の多い方ではありませんが、誰に対しても気さくに接していました。自分は芸能人だという驕(おご)りはまったくなく、周囲と自然に接していました。音楽をやっている若い子のデモテープを丁寧に聴いてあげたり、『これが流行(はや)っている最新の音楽だよ』と言われてCDを借りたりしていました。その子が書いた詩に対し、アドバイスをしてあげることもありました」(石丸氏)

 石丸氏とASKA被告は家族について語り合ったこともあったという。

「私が『こんな事件があったけど、子供さんにとっては自慢のパパだと思いますよ』とASKAさんに言うと、『そうだといいなあ』と話していました」(同)

 院内では限られた時間、テレビを見ることもでき、ASKA被告は自分のニュースがどう報じられているか、気にしていたという。

 ASKA被告は「自分が悪いんだけど……」と言いつつも、メディアの報道には不満があったようで、「警察の取り調べでしゃべったことがリークされ、正確に報じられていない。残念だ」と漏らすこともあった。

 石丸氏が特に印象に残っているのは、STAP細胞の問題で理化学研究所の笹井芳樹氏が8月5日、自殺したというニュースを見たときの言葉だという。

「『自殺しちゃだめだよね。人に迷惑をかけたときには、自分できちんとやるべきことを果たして、お詫びをする。そして、生きていくことが大切だよね』と言っていました。ご自分の立場に照らし合わせて、言っていたんだと思います」(同)

(本誌・福田雄一/今西憲之)

週刊朝日 2014年9月12日号より抜粋