災害救助犬も出動したが、行方不明者はまだ多数いる(撮影/写真部・松永卓也)
災害救助犬も出動したが、行方不明者はまだ多数いる(撮影/写真部・松永卓也)

 8月20日未明、広島市で“同時多発”土砂災害が起きた。死者は49人、行方不明者は41人(23日現在)に上る。閑静な住宅街には土石流が襲い、家や車が押しつぶされ、惨状となった。砂防学会の元会長で京都大学の水山高久教授(山地保全学)は、その原因のひとつに「真砂土(まさど)」と呼ばれる柔らかい地質を挙げる。

 これまで「腐敗した土の臭い」や「渓流での転石の音」が前兆現象だと言われてきたが、こうした情報に頼りすぎるべきではないとも警鐘を鳴らす。

「真砂土は乾燥しているので土臭いとは限らない。特にがけ崩れは、踏ん張っていて突然崩れることも考えられるので、前兆を見抜くことは非常に難しいのです」(水山教授)

 そこで早期の自主避難に役立つのが、各都道府県が発表する「土砂災害警戒情報システム」だ。国土交通省と気象庁が連携して、累積雨量や地中に浸透した雨量、今後の雨量の見込みを解析し、地面の不安定さを予測して各自治体に通報している。都道府県のホームページで確認でき、判断基準の一つになるのだ。

 ただ、今回のように、夜中の豪雨で避難したくてもできない場合は、どうすればよいのか。

「家が潰れない限り、2階に逃げると命が助かる確率は高いです。就寝中に土石流の危険が押し寄せる可能性がある場合は、2階の山側ではない部屋に避難するのが得策です」(国交省幹部)

 1時間に100ミリを超える雨が2時間以上降れば、土砂災害がどこで起きてもおかしくないという。日本どこでも災害現場になることを忘れてはならない。

(本誌取材班=上田耕司、西岡千史、永野原梨香、牧野めぐみ/今西憲之)

週刊朝日 2014年9月5日号