登山計画書は、管轄する警察署などに郵送やファクス、メールなどで提出する。登山計画書には、各登山者の氏名・性別・年齢・住所・携帯電話番号・緊急連絡先(家族)や、登山ルート、日程などを記入するが、特に書式が決まっているわけではない。各県警や「日本山岳ガイド協会」ほか、さまざまなホームページで紹介されているので確認しておこう。遭難時の捜索や救助方法などに影響するので、家族とも共有しておくことが重要だ。

 富士山の登山ルートには、「吉田ルート」「富士宮ルート」「須走ルート」「御殿場ルート」の四つがある。初心者コースとされているのが富士スバルライン五合目を起点とする「吉田ルート」と、富士宮口五合目を起点とする「富士宮ルート」だが、伊藤さんは余裕のある1泊登山を推奨する。

 それは高山病対策のためでもある。高山では空気が希薄なので酸欠状態に陥って、頭痛、吐き気、めまいなどの症状に襲われることがある。

「富士山の7~8合目まで登ると10人に1人はなんらかの予兆を感じ、20人に1人は登れなくなってしまう。そこで無理をして登ると事故につながります。いったんある程度の高さまで下れば1時間ほどで症状が治まることもありますが、十分余裕を持って登ることが重要です。また、1泊すれば、より高度に順化する時間ができ、登頂に成功する確率がぐんと高くなります」(伊藤さん)

 最後に、強風・落雷など悪天候で道を見失い、遭難した場合はどうすればいいのだろうか。

「迷わず110番通報してください」と言うのは山梨県警生活安全部地域課次席の小宮寿さんだ。

「そして、連絡がついたら、現在地から動かないことを基本原則にしてください。特に道に迷った方の中には、不安になって道を探そうとし動いてしまい、連絡がとれなくなることがよくあります。せっかく携帯電話の電波の入るところにいたのに、そこから出てしまうのです。連絡がつけば、必ず地上からの救助隊あるいはヘリによる捜索隊が来ますから、現在地が安全であることが確認できたら、そこから動かない。動くとしても移動は最小限度に抑えるようにしてください」

 本誌を参考に、初めての富士山登山を成功させてほしいものである。

週刊朝日 2014年7月18日号より抜粋