東尾修「原監督の采配に執念をみた」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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東尾修「原監督の采配に執念をみた」

連載「ときどきビーンボール」

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週刊朝日#東尾修

 勝ち星を積み重ねる巨人・原監督の采配に野球解説者の東尾修氏は、勝つことへの執念を感じたとこう語る。

*  *  *
 交流戦がほぼ終わって、セ・リーグで巨人が頭一つどころか、大きく抜け出した。広島、阪神が大きく後退して大本命が出てきた。こういった展開になると、巨人以外のチームは2位を取りにいく展開になりかねない。エースを巨人にぶつけなかったりね。そうなれば、巨人の思うつぼになる。

 それにしても、交流戦での原辰徳監督の采配は、鬼気迫るものがあった。昨年の日本シリーズで楽天に敗れた教訓、反省をナインに植え付けようという気持ちが、タクトにも表れていた。

 6月14、15両日の楽天2連戦などは、まさしくそうだった。2試合とも7回まで0–0の流れだったけど、初戦は6回裏から左翼のセペダに代えて、松本哲を外野に起用。エースの菅野が先発したこともあるが、守りから動いた戦いで8回に勝ち越し、3–1で勝利した。

 もっと顕著だったのが2戦目だな。楽天の先発は昨年の日本シリーズから攻略できずにいた則本昂大(たかひろ)。一方、巨人の先発は小山雄輝。戦前の予想では劣勢だったが、原監督は采配で乗り切った。無失点だった小山を5回途中で交代。5回裏の守りからはセペダを下げ、さらに7回の守備からはアンダーソンも松本哲に代えた。8回まで1安打に抑えていた則本には、十分な重圧だったろうな。「1点もやらんぞ」という気迫が巨人ナインにも伝わっていたから。1点をリードして立った9回のマウンドで、則本は勝利を意識して球がうわずっていた。結果は3–2で巨人が逆転勝利。

 これほど勝利への執念を出す采配は、なかなかできることではない。まず投手起用で言えば、2連戦で休養が入る交流戦だからこそ、継投が可能だ。そして、守備重視のシフトは、打線の力が大幅に落ちない巨人ならではだ。2、3人を代えても残り6人の打力があれば戦えるから。さらに言えば、若手の小山をすぐに代えたのも、他球団の監督なら、「伸び盛りの投手に則本との投げ合いで経験を積ませたい」と考えてもおかしくない場面。でも、常勝が義務づけられる巨人だからこそ、「こういった場面でも代えられる可能性がある。0点に抑えても内容が問われる」という厳しさを伝えられた気がする。

 監督に求心力がなければできない采配でもある。選手も精神面で大人でなければ、ついていけないよ。0点なのになんで交代だ、なんてね。でも、そんな不満は聞こえてこない。原監督が就任してずっと植え付けてきたメンタリティーが浸透している証拠だろうな。

 原監督は父・貢氏が亡くなって、厳しい父の指導をもう一度思い出したことだろう。実力至上主義、勝利を目指す上で私情をはさまない。心を鬼にしているようにすら感じるよ。

 もう一つ。阿部や村田の打席であえてエンドランをかけるシーンを度々、目にした。これも意識付けの一つだろうな。交流戦の中で、ポストシーズンをにらんだ作戦を試したというところだろう。短期決戦になれば、そういう局面は増える。「特別」なことを、今のうちに「当たり前」のレベルに引き上げる。たとえ、失敗に終わっても、選手の地力を高めていく意図を痛いほど感じるね。

 ただ、高い理想はそれだけ実現が難しい。だからこそ、他球団も食らいついてほしい。巨人を自由にさせたら、盛り上がらないよ。

週刊朝日  2014年7月4日号


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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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