「佐村河内氏に癒された」演出家・河原雅彦が病んでいた過去 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「佐村河内氏に癒された」演出家・河原雅彦が病んでいた過去

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 俳優、演出家、脚本家として活躍する河原雅彦氏は、残虐な事件をモチーフとした舞台準備のためソチ五輪が楽しめなかったという。

*  *  *
 只今、古田新太先輩と一緒に舞台『万獣こわい』の本番中だったりする自分。

 この作品、過去に世間を騒がせたセンセーショナルないくつかの事件がモチーフになっているものでして。

 そのいずれも、事件発覚当初はかなり扇情的に報道されたのだけど、事件の全貌が明らかになっていくにつれ、あまりの残虐性にメディア側からこぞって自主規制がかかり、事件の詳細自体はそれほど一般に知れ渡っていないのですな。要は、人の弱みにつけ込んだ犯人が、鬼畜の如き虐待の果てにマインドコントロールを完成。自らの手を一切汚さないまま、目を覆うしかないような殺戮(さつりく)が繰り広げられるという、こうして書いていても開いた口が塞がらない稀代の事件。そんな事件がいくつか存在するという戦慄(せんりつ)も含め、マジ壮絶過ぎて完全にドラマを超えてしまっているんスよ。もちろん舞台の方は、さすが宮藤(官九郎)さんが書き下ろしているだけあって、軽妙に、けれど、めちゃ刺激的なエンタメに落とし込んでいるわけですが、この舞台の準備期間を含めると、去年の暮れからここまで約3カ月強、自分の頭の中のほとんどがこれらの事件にどっぷりだったため、普段の生活でもその影響を受けまくりで。

 その代表例がソチ五輪を全く楽しめなかったこと。稽古期間中が巷も稽古場もこの話題で一色だったのに、さっぱり乗れなかったっス……あまりに華やか過ぎて。そりゃ羽生君の金メダルや葛西選手の大奮闘、真央ちゃんのフリーの演技など、その都度「いいぞぉ!」とは思うのだけど、頭の中がダーク過ぎて、ちっともはしゃぐ回路まで到達できない。普段からスポーツ観戦が大好きでオリンピック関連は大好物だっただけに、これは本当につらかった。眩(まぶ)し過ぎる日本選手団の活躍を直視するには、サングラスが必要なぐらいのコンディションなんだもの。

 それより森元首相の失言報道見てる方がよっぽど落ち着くわ、っていうね。

 あれも助かった! 佐村河内氏のゴーストライター報道。彼が薄ぼんやりした部屋で壁に頭を激しく打ちつける姿を見るたび、「体張ってんなー」って、なんだか癒やされたし。

 あと、「大雪りばぁねっと。」の使途不明金! あの、いろんな意味で“贅(ぜい)を尽くしてきた感”満載の巨漢が、税金使って被災地でニューハーフショーを開催したり、A5クラスのサシが入った高級肉を頻繁に食べてたっていう、どうしようもないニュースをぼんやり眺めていると、脳にα波がじんわり流れ出すのを感じたっけ。

 とにかくこの期間は、暗黒面に覆われた頭のクールダウンの意味で、これらをむさぼるように見漁ったダメェェェな記憶がございます。

 例えばボクサーにつらい減量が付き物のように、演出家もその時々で対峙する作品のカラーに見合った思考のコンディションに追い込まれる傾向があるわけですが、や、若干病みかけてましたね、あの頃は完璧に。

 というわけで、真央ちゃんにはなにがなんでも現役を続行してもらい、次の平昌(ピョンチャン)五輪で多いにはしゃがせていただきたい。森さんも娘さんやお孫さんにたしなめられる程度の失言だったら全然アリの方向で。いや、やっぱダメか、そっちは。

週刊朝日  2014年4月4日号


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