ローザンヌの舞台で課題曲「ラ・バヤデール」を踊る前田さん (c)朝日新聞社 @@写禁
ローザンヌの舞台で課題曲「ラ・バヤデール」を踊る前田さん (c)朝日新聞社 @@写禁

 若手バレエダンサーの登竜門、スイス・ローザンヌ国際バレエコンクールで、6位までの入賞者のうち日本人が1位、2位含め3人を占める快挙を果たした。1位の二山治雄(にやまはるお)さん(17)と2位の前田紗江(さえ)さん(15)は現役高校生。6位の加藤三希央(みきお)さん(18)はモナコのバレエ学校に留学中だ。

 今回本誌は、2人の“バレエ王子”ではなく、163センチの長身を生かした優雅な動きで2位に輝いた前田さんに注目した。

「2位の発表で、サエ・マエダと自分の名前が呼ばれたので、びっくりしました。自分が入賞するとは思っていなかったから」

 所属する「マユミ・キノウチ バレエスタジオ」で、前田さんはすらりと長い手足をソファに沈めながら、はにかんだ笑顔をみせた。

 バレエを習い始めたのは、小学校1年生と遅いほうだ。始めた動機は、「姉の発表会を見て、私もきれいな衣装を着たいと思ったから」という。だが、すぐにバレエが大好きになった。運動神経もよく、小4で出場したコンクールで早くも入賞。

「とても気持ちよく踊れたんです。このときに、プロになろうと思った」

 めきめき上達し、小6で国際コンクール「ユース・アメリカ・グランプリ」のニューヨーク決選に進んだ。中1で挑んだ同コンクールでは、トップ12入り。

 火曜日から日曜日までバレエ漬けの日々で、月曜日は友人との時間を楽しむが、自宅に帰ればバレエのDVDを見てしまう。「学校の授業中も、ふとバレエのことが頭をよぎる」と前田さんは笑う。

 ローザンヌのコンクールを目指したのは、2年前に1位に輝いた菅井円加(まどか)さんに刺激を受けたからだ。

 予選を通過した前田さんは本番に向けてある“特訓”を重ねた。コンクール会場のボーリュ劇場の舞台は、観客が観劇しやすいよう前方に向かって3.5度の傾斜がついている。ダンサー泣かせの劇場だ。

「自宅近くの坂で、回転や踊りの練習をして傾斜へのカンをつかみました」

 入賞者には著名なバレエ学校へ留学する権利や奨学金などが与えられる。前田さんは、英国のロイヤル・バレエ学校を希望している。

「将来はロイヤル・バレエ団に入りたい。プリンシパルを務めるマリアネラ・ヌニェスさんと同じ舞台に立つことが夢です」

週刊朝日  2014年2月21日号