会見で質問に答える籾井会長 (c)朝日新聞社 @@写禁
会見で質問に答える籾井会長 (c)朝日新聞社 @@写禁

 NHKの籾井勝人(もみいかつと)会長が1月25日の就任会見で、歴史的認識や政治的中立性を疑われる発言を繰り返した。

 まずは「領土問題」に関する発言から。

――日本の明確な領土ですから、これを国民にきちっと理解してもらう必要がある。今までの放送で十分かどうかは検証したい。国際放送は、国内放送とは違う。領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない。(籾井NHK会長の就任会見での発言)

 元NHK職員でジャーナリストの立花孝志氏はこう切って捨てる。「放送法第4条に違反した発言です。読んだことがないのではないでしょうか」。

 放送法は、放送局の規律に関する法律をまとめたもの。第4条にはこうある。

「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」

 立花氏が続ける。「NHKは公共放送です。受信料を徴収して成り立っている。つまり、庶民によって権力を監視する放送機関なのです。そのトップが『政府が右なら左と言うわけにはいかない』と。誰も受信料を払わなくなります」。

 立教大学の砂川浩慶准教授(メディア論)も失笑。

「国際放送については、一部税金で賄われているため、『こういう放送をしてほしい』と国から要請はあります。だが、もちろん編集権は独立している。『政府の立場を主張する』のは、あまりにおかしい。北朝鮮の朝鮮中央テレビのような国営放送ではないんですよ」

 次に「靖国神社参拝」。

――総理が信念で行かれたということで、それはそれでよろしいじゃないですか。いいの悪いのという立場にない。ただ総理は靖国に参拝されましたというだけ。ピリオドでしょ(籾井NHK会長の就任会見での発言)

 前出の立花氏は、「『信念』という言葉。これがいけません。これでは、総理の行動を明らかに容認していると思われても仕方ありませんよ」と手厳しい。

週刊朝日  2014年2月14日号