村上誠一郎(むらかみ・せいいちろう)東大法卒。愛媛2区、当選9回。第2次小泉改造、第3次小泉内閣で規制改革・産業再生機構担当相。2010年に高村派を退会、無派閥(撮影/写真部・時津剛)
村上誠一郎(むらかみ・せいいちろう)
東大法卒。愛媛2区、当選9回。第2次小泉改造、第3次小泉内閣で規制改革・産業再生機構担当相。2010年に高村派を退会、無派閥(撮影/写真部・時津剛)
衆院本会議で特定秘密保護法案が可決され拍手する安倍晋三首相ら=26日午後8時11分 (c)朝日新聞社 @@写禁
衆院本会議で特定秘密保護法案が可決され拍手する安倍晋三首相ら=26日午後8時11分 (c)朝日新聞社 @@写禁

「悪法」と言われる特定秘密保護法案が、11月26日夜、衆院をついに通過。今国会での成立が確実な情勢となった。衆院採決の際、自民党でただ一人賛成しなかったのが村上誠一郎元行革担当相(61)だ。法案が国会に提出される前の10月22日、党の総務会でも反対を主張、また26年前、同党が目指したスパイ防止法案(廃案)でも反対を唱えた筋金入りだ。造反したワケを大いに吠えた。

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 10月の総務会後、いくつかのメディアに私の考えが取り上げられました。同僚議員からしょっちゅう「いい意見だ」「頑張ってくれ」と激励されました。じゃあ誰か自分の良心に従って付き合ってくれよって言ったけど、皆目ゼロ。

 みんな首相官邸が怖いんでしょうね。96年に小選挙区制度になって、総理総裁が党の公認権、カネ、そして比例順位をすべて握りました。その結果、昔自民党にあった多様性が失われ、独裁となりました。私は小選挙区制度の導入にも反対しました。カネのかからない選挙をというのであれば、連座制とあっせん利得罪を強化すれば事足りた。今回も秘密が漏洩しないよう国家公務員法や自衛隊法を改正、強化すればいい。

 2005年の郵政選挙で、当時の小泉純一郎首相(71)が郵政民営化法案に反対する人を追い出し、刺客まで立てました。昔の自民党はあそこまでえげつないことはしなかった。あれがみんなのトラウマになっているのでしょう。

 派閥が悪いと言いますが、昔の派閥の領袖は偉かったと思いますよ。党内で違う主張を唱え、執行部にたてついても必ず選挙や人事ではガードしてくれた。私が入っていた派閥の会長の河本敏夫さんは「みんなの価値観でどんどんやってくれ」と言ってくれました。

 小泉さんも無責任ですよ。脱原発を訴えていますが、電気料金が跳ね上がったらアベノミクスは飛んでしまう。代替エネルギーをどうするかも提示しない。首相が脱原発を決断すれば知恵は出てくるっていうけど、そんな簡単じゃない。

 安倍晋三首相(59)が今やるべきは、財政の立て直しと外交、そしてエネルギー政策です。アベノミクスがうまくいかず、物価が上がり、貸金が上がらないとなると、その反動は「倍返し」どころではないと思う。

 貿易収支や経常収支が赤字になると、預金を取り崩すことになる。するとまた財政赤字が膨らむ。財政破綻したらもう国は終わりですよ。そのとき、なんでこんな法案にかまけていたんだということになります。

 選挙で勝ちすぎると必ず慢心します。選挙で獲得した議席数と民意は必ずしも一致しません。民意以上に議席が取れてしまうのが小選挙区制度です。高転びする可能性があります。

 もう党内で私みたいのは珍しいのかな。融通が利かないしね。本当はもっと若手が声を上げるべきです。周りから白い目で見られるし、私ももう疲れましたよ(苦笑)。

週刊朝日  2013年12月13日号