田原総一朗 「直感の天才」小泉元首相が日本の原発政策を変える 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗 「直感の天才」小泉元首相が日本の原発政策を変える

連載「ギロン堂」

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 小泉純一郎元首相が講演などで脱原発を訴えている。ジャーナリストの田原総一朗氏は、小泉元首相の発言が日本の原発政策に変化を促すと話す。

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 小泉純一郎元首相の脱原発発言が大きな話題になっている。

「原発が動かなくなってからもう2年くらいになる。政治が早く、将来原発ゼロにしようという目標を打ち出せば、多くの国民がどんどん協力すると思います」

 私は、小泉元首相は「直感力の天才」だと思っている。

 小泉氏が自民党の総裁選に出馬しようかどうか迷っていたとき、私はある人に頼まれて小泉氏に会った。そして「出馬についてどう思うか」と聞かれたので、「経世会(旧田中派)と、平気でとことんケンカする気があるのなら、私は支持してもよい」と答えた。「でもね、殺されるかもしれないよ」とつけ加えると、小泉氏は「殺されても、やる」と、きっぱりと言った。

 もっとも経世会とケンカするといっても、一般の人にはよくわからない。小泉氏は総裁選の街頭演説で「自民党をぶっ壊す」と言い換えて熱弁を振るい、有権者の圧倒的な支持を得た。こういうところの感覚がすごいと思う。

 2005年の「郵政解散」でも、すさまじい直感力を示した。郵政民営化関連法案には自民党内にも反対する議員が多く、衆議院はぎりぎりで通ったものの、参議院はほぼ間違いなく否決の情勢だった。そこで長老議員たちは「採決しないで継続審議にせよ。否決されたら総辞職しかない」と説得したのだが、小泉首相は採決に踏み切り、否決されると、何と衆議院を解散した。

 多くの政治家もメディアも「小泉自民党は大敗する」と読んだが、「命をかける」「全政治生命をかける」と威勢よく言い放って、なんと大勝した。このときメディアが使ったのが「小泉劇場」という言葉だ。

 今回の小泉氏の脱原発発言は、フィンランドを訪問して「オンカロ」を視察し、「原発はダメだ」と直感したのである。「オンカロ」はフィンランドがつくった世界初の使用済み核燃料の最終処分場である。そこで使用済み核燃料の無害化に10万年以上かかると聞いて、冒頭の発言になったのだ。実は、このとき日本の原発メーカーの幹部が同行していて、彼は「高速炉で処理すれば300年で無害化できる」と説明したのだが、小泉氏は理解してくれなかったと不満を漏らしている。

 現在、自民党政権は原発推進の姿勢を強めているが、日本の原発には様々な問題がある。最大の問題は原子力を含めたエネルギーの総合戦略ができていないことだ。原発問題は経済産業省、環境省、復興庁、文部科学省、厚生労働省など、いくつもの省庁にまたがっていて、総合戦略が策定しにくい構造になっている。

 さらに汚染水問題、廃炉問題、再稼働問題、除染問題、そして最終処分場の問題など、難問が山積みだ。決着に向かっているのか、悪化しているのかさえよくわからない。何より原発問題の責任者がどこにいるのかもよくわからない。

 小泉発言は少なからぬ影響力がある。政府の原発担当幹部たちは困惑しているはずだ。しかし、だからこそ、私は小泉発言が原発総合戦略を後押しする、というより、いや応なく前倒しで進めざるを得なくさせるのではないかと考えている。

 小泉氏の「脱原発」発言で何となくホッとした人も多いかもしれない。だが、実は「脱原発」であろうとなかろうと、原発をめぐる数々の難問に取り組まざるを得ないのである。

週刊朝日 2013年11月8日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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