予備校で一生懸命に勉強するのは受験生だけではない。高校の教員たちも春休みや夏休みといった長期休暇になると、予備校で「教える力」の向上のために特訓を受けている。
高校教員が予備校で学ぶようになった背景について、『中学・高校・大学最新学校マップ』(河出書房新社刊)などの著書があり、予備校事情にも詳しい教育ジャーナリストの小林哲夫氏はこう語る。
「特に首都圏では、1980年代までは公立高校と予備校が親しくなるのはとんでもない話で、公立は受験指導には熱心ではなかった」
東京都が67年に学校群制度を導入してから都立高校の東大合格者数は年々減少し、64年に東大合格者数が193人で全国トップだった日比谷は、90年代初めには7~8人にまで凋落した。
「このため2001年に当時の石原慎太郎知事が『都立復権』をスローガンに都立高校の改革を実施し、進学指導重点校を指定しました。東大合格者数などの数値目標をクリアするためには予備校に頼らざるを得なくなったのです」(小林氏)
この言葉を裏付けるように、代々木ゼミナール教育総合研究所の鍋島史一所長が語る。
「01年の3月に東京都から都立高校における進学対策に関する調査の依頼があり、実際に都立高校の授業や組織を見学しました。その後、9月に日比谷、戸山、西、八王子東の4校が進学指導重点校に指定されました。90年代半ばごろから講師を高校に派遣するようになり、今では出張の研修は随時実施しています」
こうして予備校との協力態勢が広がってきたわけだが、全国の高校の取り組み方はどうだろうか。
※週刊朝日 2013年10月25日号