木村元彦(きむら・ゆきひこ)1962年生。ジャーナリスト。著書に『オシムの言葉』(2005年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞)、『終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ』など(撮影/写真部・大嶋千尋)
木村元彦(きむら・ゆきひこ)
1962年生。ジャーナリスト。著書に『オシムの言葉』(2005年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞)、『終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ』など(撮影/写真部・大嶋千尋)
安田浩一(やすだ・こういち)1964年生。ジャーナリスト。在特会に密着したルポ『ネットと愛国』(第34回講談社ノンフィクション賞)など、事件・労働問題を中心に執筆(撮影/写真部・大嶋千尋)
安田浩一(やすだ・こういち)
1964年生。ジャーナリスト。在特会に密着したルポ『ネットと愛国』(第34回講談社ノンフィクション賞)など、事件・労働問題を中心に執筆(撮影/写真部・大嶋千尋)
清義明(せい・よしあき)1967年生。(株)オン・ザ・コーナー代表取締役、ヨコハマ・フットボール映画祭代表、ライター。サポーター活動に加え、排外デモ反対活動にも参加(撮影/写真部・大嶋千尋)
清義明(せい・よしあき)
1967年生。(株)オン・ザ・コーナー代表取締役、ヨコハマ・フットボール映画祭代表、ライター。サポーター活動に加え、排外デモ反対活動にも参加(撮影/写真部・大嶋千尋)

 今年7月に韓国で行われた東アジアカップ日韓戦では、日本のサポーターが旧日本軍の軍旗として使われた旭日旗を掲げ、韓国のサポーターは、伊藤博文を暗殺した抗日闘争の英雄とされる安重根の巨大なフラッグや日本を非難したと受け取れる横断幕を出し、社会問題化した。ジャーナリストの木村元彦氏、安田浩一氏、ライターの清義明氏がこの問題について激論を交わした。

*  *  *

木村:東アジアカップの日韓戦のとき、清さんは現地にいたんでしょう?

清:スタジアムにいたけれど、実際に旭日旗が出た瞬間はわからなかったですね。試合後に日本代表サポーターが旭日旗を出した仲間に対して怒っていたことで初めて知りました。

安田:現地で持ち物のチェックはないんですか?

清:あります。他のサポーターで事前に旭日旗を没収されていた人もいたので、どうして一人だけ持ち込めたのかわからないんですよね。ただ、日本のスタジアムに比べるとチェックが甘かったかもしれませんが。

安田:旭日旗については韓国国内で大問題になったと思いますけど、逆に「歴史を忘却した民族に未来はない」と韓国語で書かれた横断幕についてはどういう反応でした?

清:今回興味深かったのが、韓国国内でもあの横断幕はバッシングにあっているんです。ロンドン五輪で「独島はわれわれの領土」という紙を掲げた問題もあって、スタジアムに政治的な主張を持ち込むのがダメなことはすでに学んだはずだ、という論調でした。

安田:日本側の旭日旗を掲げたサポーターは、旭日旗に韓国人が強い反感を持っているのをわかってやったんですか?

清:わかってやっていますね。ただ、これは一般の人には理解しにくいと思うんですが、サッカーのサポーターと煽り煽られながらやっているわけです。そういう相手への挑発という意味で、サッカー的ではある。

木村:とはいえ、こういう問題が起こるたびに考えてしまうのは、ピッチ内の選手たちがどう思うのかということです。「韓国サポーターを挑発することでピッチの雰囲気を変えたい」とか、いろんな思いはあると思うんですね。しかし、異様な雰囲気の中でプレーすることを本当に選手が望んでいるのか。

安田:今回の横断幕の件では、韓国サッカー協会に横断幕を下ろせと言われたことで、韓国サポーターが応援をボイコットしたんでしょう?

清:あれはサポーターとしてありえないです。

木村:スタジアムに政治を持ち込んではいけないというのは、プレーヤーズファーストの観点からも考えるべきなんです。選手たちは竹島の領有権のような政治的なトピックのためにプレーをしているわけじゃないんです。サッカーという競技を政治利用で貶(おとし)めることはしてはいけない。

週刊朝日  2013年10月11日号