一見、線で描かれた絵のようでもある。しかし、これが一枚のコピー用紙と市販のカッターナイフで作った切り絵と聞いても、にわかに信じ難い。最も細い線で約0.1ミリ。切り師・長屋明さんは寡黙にカッターを動かし、紙に潜む線をあらわにしていく。作品にもよるが、約1カ月かけて仕上げる。
「切り絵に見えないことを追求してきたものの、最近では切り絵であること自体が伝わりにくくなってしまいました」
長屋さんは苦笑する。しかし、手に取るとそれは紛れもなく切り絵である。あまりにも軽く、限界まで細く切り出されており、糸のような繊細さに手が震える。
約30年前、独学で始めた。
「絵はきれいに描けないけど、カッティング次第で絵以上にきれいに仕上がるので、達成感があります。紙とカッターさえあればどこでもできるので長続きしました」
気付けば、線画と見まごう独自の切り絵の世界を築いていた。
「切っているときがいちばん無心で自由。人に驚いてもらえるのが喜びなんです」
※週刊朝日 2013年9月27日号