「子どもの世話にはなりたくない」という団塊世代の女性が増え、ちまたではサービス付き高齢者向け住宅も急増している。社会学者で『おひとりさまの老後』などの著書がある、社会学者の上野千鶴子さんは理想の老後生活のあり方についてこう語る。

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 高齢者福祉では、医療、看護、介護の三つの連携が重要です。しかしこれに加え、ようやく「居住」も注目され始めたと感じます。最近では施設の住宅化と住宅の施設化の双方向からの歩み寄りがあり、そのあらわれのひとつがサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の普及です。

 サ高住は集合住宅ですから、隣の生活音が気になる人もいますし、一方では、身近に人の気配がある環境に安心する人もいます。好きずきですね。

 その人の健康状態にもよりますね。元気なときは一人でも大丈夫だったけれど、大病してから不安が強くなり、サ高住に入居した人もいます。そのサ高住には緊急ベルがあって、呼べば夜中でも担当者がかけつけてくれるから安心だとおっしゃっていました。

 私は、住みなれた住宅で最期まで暮らしたいですね。住宅というのはたんなるハコではなく、身体の延長であり思い出の集積ですから。

 日本の高齢者は、持ち家率も高いし、貯蓄率・貯蓄額も高い。高齢期になってわざわざ有料老人ホームやサ高住に移って高い入居金や住居費を支払うくらいなら、自分の家に住んでその分を外からサービスを購入する費用にあてる方がよいのではと私は思います。

 ただ、私のように最期まで住みなれた自宅でと思っていても、子世代と同居しているばっかりに、子どもに追い出されるように施設へ入居したりということが起きます。あるいは自宅を売却して高齢者住宅に住みたいのに、子どもの反対で住めない人もいます。

 日本では、年金も資産も子どもが管理して、使わない、使わせない傾向があります。親の資金をあてにしない子どもとの関係が必要ですね。

 それと、そもそも親子は同居しないこと。日本人は要介護になったときに子どもがいれば「なぜ同居しないの?」と言われます。

 ですが親子で同居していると、子どもに資産を管理されてしまいがちです。子どものほうも24時間介護では大変な思いをします。

 ならば、はなから親子で別々にすむこと。パートタイム家族と考えて、通いながら介護をすればいいのではないでしょうか。

週刊朝日  2013年9月27日号