ミスチルやゆずなど人気アーティストのCDジャケットのデザインやPVを手がけている女性若手アートディレクター森本千絵さん。作家・林真理子氏との対談で仕事観について明かした。

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林:2007年に独立して、デザインオフィス「goen°」を立ち上げたんですよね。「ご縁」というネーミングが森本さんらしくてすてきですね。お仕事のオファー、いっぱいでしょうけど、お金にならなくても、おもしろいことならやっちゃう?

森本:やります。進化できるのならばやります。何がチャンスにつながるかわからないので、すてきだな、おもしろそうだな、と思える何かがあったら、事情や予算はあまり関係なくやらせていただきます。

林:お店の設計もされるんですか。

森本:片足を踏み込んでいます。数人のチームでやるという感じで、お店一軒まるまるを一人でというのはまだないです。でも、今ちょっと始めています。ロゴからショッピングバッグ、内装まで全部一人でというのを。

林:環境問題もやってますよね。

森本:やってはいるんですけど、生半可なんですよ。善人ぶって、自然をよくしようと、陰ながらコツコツ活動するというのは私には無理なんだってわかりました。おいしいものが食べたいから、おいしいものが食べられるように環境がよくなってほしいという欲が先にあるんです。

林:ああ、なるほど。

森本:地球をデザインで救おうぐらいの規模で、目を輝かせて依頼していただくことが多いんですけど、4階ぐらいの高さの大波にもまれて人工呼吸で生き返ったなんて経験をすると……。

林:それ、森本さんが経験したわけ?

森本:はい。そういう死ぬような経験をしたときに、きれいごとを言う環境系の依頼は絶対に受けられないなと思ったんです。人は地球のごくごく一部で生かしてもらっているのであって、地球をデザインで救うなんてとんでもないことだと思ったんですね。地球のためじゃなくて、自分たちのためのものだったら受けます。だけど、神様目線みたいな環境系の依頼は、ぼやけすぎて共感しないんで、やらないようにしてます。

週刊朝日  2013年9月20日号