乳房全摘手術しても再建が可能 保険適用も可能な乳がん 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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乳房全摘手術しても再建が可能 保険適用も可能な乳がん

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 乳がんの患者数は、食生活の欧米化などを背景に上昇し続けている。聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子医師はこう話す。

「罹患年齢のピークは40代後半から50代前半。他のがんに比べると若いことが特徴の一つです」

 がんの9割は母乳を運ぶ乳管で発生する。乳管の中にとどまっている「非浸潤がん」であれば、切除手術で根治できる可能性が高い。しかし乳管を破り、周囲の組織まで広がる「浸潤がん」になると、がんが転移しやすいわきの下のリンパ節まで郭清(かくせい=切除)しなければならないこともある。リンパ節を大きく郭清すると腕のむくみなどの合併症が出やすくなることから、近年は数あるリンパ節のうち、がん細胞が最初に流れ着くリンパ節を切除して調べる「センチネル(見張り)リンパ節生検」を導入する病院が増えている。

「センチネルリンパ節に転移がなければ、その他のリンパ節の郭清を避けることができます。戦後のQOL(生活の質)に大きく影響するだけに、こういう方法があることを知っておいてほしいです」(山内医師)

 乳がんの外科手術はかつて、がんを乳房ごと大きく切り取る「乳房全摘手術」が主流だった。しかし、がんが小さければ、がんとその周辺組織だけを切除しても生存率に差がないことがわかり、できるだけ乳房を残す「乳房部分切除術」も普及した。術後に放射線治療を受ける必要があるが、この方法を希望する女性も少なくない。しかし山内医師はこう話す。

「がんのしこりからタコ足のように乳管の中に広がっている場合もあり、慎重に判断する必要があります。がんを取りきることが大前提なので、温存率が高いほどいい病院というわけではありません」

 乳房全摘手術をしても、人口物(インプラント)や自分の腹部や背中の組織を使い、乳房を再建することができる。2013年からは、自家組織だけでなく一部の人工物にも保険が適用されるようになった。

 再建には、手術と同時に実施する「同時再建」と、手術から時間をおいて再建手術をする「二次再建」の二つの方法がある。再建技術の向上により、温存が可能でも、全摘して再建する方法を選ぶ人もいるという。

 また、乳がんは比較的薬が効きやすい。がんのタイプによって効果のある薬に違いがある。たとえば、女性ホルモンのエストロゲンの影響を受けて増殖するタイプのがんには、その働きをブロックする抗がん剤が使われ、HER2という遺伝子が多く発現するタイプにはハーセプチンという薬が有効だ。

「しこりの大きさや広がり、数、位置、リンパ節移転の有無、他臓器への転移の有無だけでなく、どの薬が有効なタイプのがんなのかを見極め、最適な治療法を検討する必要があります」と山内医師は言う。

 なお乳がんの3~5%は遺伝性で、「BRCA」という遺伝子に変異を持つ人がかかりやすいことがわかっている。女優のアンジェリーナ・ジョリーが将来がんになるのを防ぐために乳房切除手術を受けたことを公表し、話題になった。

「BRCAに異変がある人は卵管・卵巣がんにもなりやすい。卵巣がんのほうが検診で見つけにくく、見つかったときには進行している場合が多いですから、乳房よりも卵巣、卵管の予防切除を優先すべきです。生命予後が改善できるというデータがあり、アメリカのガイドライン(治療指針)でも推奨されています。乳房再建に失敗するリスクもゼロではありませんが、メリット・デメリットをわかったうえで選択できるのが望ましいでしょう」(同)

 乳がんの治療はがんを取れば終わりではなく、治療を終えてからの人生が長い。

「主治医に任せきりにするのではなく、自分の人生にとって何が大切なのかを考えて、賢く治療を選択してほしい」と山内医師は話している。

週刊朝日 2013年9月6日号


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