驚くほど美しい日本の“巨大”研究所 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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驚くほど美しい日本の“巨大”研究所

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400メートル試験水槽海上技術安全研究所(東京都三鷹市)水槽をまたぐ橋のような台車(写真奥の緑色に光る物体)が模型船を動かし、水から受ける力などを測定する。データから実際の船の燃費などが計算できる。日本一の長さを生かし、全長50メートルの模型船の実験をしたことも。最も重要な計測の精度を支えるのは、水槽の両側に沿って敷かれた台車が乗るレール。新幹線用のレールを、近くで見ても継ぎ目がわからないくらい滑らかに溶接している。造船業界が活況だった1966年にできた(撮影/写真部・工藤隆太郎)

400メートル試験水槽
海上技術安全研究所
(東京都三鷹市)
水槽をまたぐ橋のような台車(写真奥の緑色に光る物体)が模型船を動かし、水から受ける力などを測定する。データから実際の船の燃費などが計算できる。日本一の長さを生かし、全長50メートルの模型船の実験をしたことも。最も重要な計測の精度を支えるのは、水槽の両側に沿って敷かれた台車が乗るレール。新幹線用のレールを、近くで見ても継ぎ目がわからないくらい滑らかに溶接している。造船業界が活況だった1966年にできた(撮影/写真部・工藤隆太郎)

E-ディフェンス防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)阪神・淡路大震災をきっかけに、「被害に学ぶ」ではなく「被害が出る前に実験で確かめる」ために建設され、2005年から稼働。縦20メートル、横15メートルの震動台は世界最大。6階建てまでの建物(重さ1200トン)をのせて実験ができる。特徴は前後、左右、上下という3Dの揺れを再現できるところ。さらに、今年3月に長時間のゆっくりとした揺れを再現するために改修し、これまで最長5分だった揺らせる時間が17分まで延びた(撮影/写真部・工藤隆太郎)

E-ディフェンス
防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター
(兵庫県三木市)
阪神・淡路大震災をきっかけに、「被害に学ぶ」ではなく「被害が出る前に実験で確かめる」ために建設され、2005年から稼働。縦20メートル、横15メートルの震動台は世界最大。6階建てまでの建物(重さ1200トン)をのせて実験ができる。特徴は前後、左右、上下という3Dの揺れを再現できるところ。さらに、今年3月に長時間のゆっくりとした揺れを再現するために改修し、これまで最長5分だった揺らせる時間が17分まで延びた(撮影/写真部・工藤隆太郎)

激光XII号大阪大学レーザーエネルギー学研究センター(大阪府吹田市)「核融合」を起こすことを目標に1983年に造られた日本最大のレーザー装置。燃料の重水素は海水中に無限にある。核融合に成功すればそのときに出る巨大なエネルギーで装置の運転エネルギーまでまかなえる上に、安全性が高い「究極の発電システム」ができる。写真中央は、巨大なレーザー管が集まる核融合炉。12本のレーザーが打ち込まれる炉の中心は、地球全体で受ける太陽光をボールペンの先に集めたくらいのエネルギー密度となる(撮影/写真部・工藤隆太郎)

激光XII号
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
(大阪府吹田市)
「核融合」を起こすことを目標に1983年に造られた日本最大のレーザー装置。燃料の重水素は海水中に無限にある。核融合に成功すればそのときに出る巨大なエネルギーで装置の運転エネルギーまでまかなえる上に、安全性が高い「究極の発電システム」ができる。写真中央は、巨大なレーザー管が集まる核融合炉。12本のレーザーが打ち込まれる炉の中心は、地球全体で受ける太陽光をボールペンの先に集めたくらいのエネルギー密度となる(撮影/写真部・工藤隆太郎)

雪氷防災実験棟防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター(山形県新庄市)天然の雪に近い結晶の人口雪を降らせる装置としては世界唯一のもの。多いときには2メートル以上もの雪が積もる豪雪地帯にあるが、夏になれば雪はない。1997年に完成して、一年中、雪の実験ができるようになった。この実験棟で降る雪の結晶は、日本で最もよく見られる木の枝状のもの。1時間で最大3センチまで積もる。気温マイナス30度まで下げられる実験室内には、南極越冬隊と同じ防寒着とブーツで入る。海外から研究者が見学に来ることも多い(撮影/写真部・工藤隆太郎)

雪氷防災実験棟
防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター
(山形県新庄市)
天然の雪に近い結晶の人口雪を降らせる装置としては世界唯一のもの。多いときには2メートル以上もの雪が積もる豪雪地帯にあるが、夏になれば雪はない。1997年に完成して、一年中、雪の実験ができるようになった。この実験棟で降る雪の結晶は、日本で最もよく見られる木の枝状のもの。1時間で最大3センチまで積もる。気温マイナス30度まで下げられる実験室内には、南極越冬隊と同じ防寒着とブーツで入る。海外から研究者が見学に来ることも多い(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 日本の頭脳と技術の粋を集めた「知と技術の闘技場」は、最大にして最先端、そしてどこか美しい。日本の底力を秘めた世界屈指の四つの巨大研究所を訪ね歩いた。海上技術安全研究所(東京都三鷹市)、防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)、大阪大学レーザーエネルギー学研究センター(大阪府吹田市)、防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター(山形県新庄市)だ。

 不思議な魅力を放つ、これら四つの研究施設。実験をするための無機質で巨大な空間がSF映画のように見えたのは、最先端技術を駆使して、未来を切り開くために造られたことと無関係ではない。たとえば、宇宙船の機関部を思わせるレーザー装置「激光XII号」はエネルギー問題を解決する切り札となり得る核融合を目指している。

 だが、この装置を支える最先端技術は、すでに中国に流出していた。レーザー装置には、レーザーガラスが欠かせないが、かつて、最高品質のレーザーガラスを世界で唯一造ることができた日本企業の天才的な研究者が、中国の研究所へ渡ってしまったのだ。近い将来、最高品質のレーザーガラスは中国でしか造れなくなるだろう、という。

 しかし、意外な業界の発明が窮地を救った。大阪の建材メーカー・神島(こうのしま)化学工業がレーザー装置に使える透明なセラミックを開発したのだ。「激光XII号」のある大阪大学レーザーエネルギー研究センターの畦地(あぜち)宏センター長が説明する。

「レーザーガラスは、2時間冷まさなければ光の照射ができない。ところが、熱伝導率がガラスの数十倍もあって冷めやすい透明セラミックを使えば、核融合に必要な1秒間に10回のレーザー照射が可能になるのです」

 世界屈指の巨大研究所は、日本の技術の底力を秘めている。

週刊朝日  2013年8月30日号


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