睡眠中に何度も呼吸が停止したり、空気の取り入れが低下した状態が続く低呼吸になったりする睡眠時無呼吸症候群(SAS)。病状や患者の希望により、治療も多様化している。日本におけるSAS治療の第一人者で日本睡眠学会認定医の井上雄一医師に、SASの治療を受ける際の注意点や医療機関の選び方などについて聞いた。

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 自覚症状がなく、放置していると万病のもとになりかねないという点で、SASは糖尿病のような特徴がある病気です。肥満の人のほうがSASの発症リスクが高まりますが、日本人の場合、顔面や頸部の骨格、遺伝などの影響上、低肥満の人であっても発症します。

 血圧が正常で、昼間に眠気を感じない、心臓血管系にも問題がない、という人でない限り、SASは治療したほうがいいでしょう。SASは心筋梗塞や心不全などの循環器の病気に影響するといわれていますし、逆に循環器の病気がSASを引き起こすとの報告もあります。

 治療法はCPAP(シーパップ=Continuous Positive Airway Pressure)が中心で、もっとも普及しています。しかし、軽症例には専用のマウスピースも適用され、場合によっては手術を施すこともあります。患者の状態や希望、症例の重症度によって治療が変わるので、どの治療を選択すればいいか、一概にいえない面もあります。患者ごとにどの治療がふさわしいかを見極める「テーラーメード治療」が必要になります。

 たとえば軽症例では、身体に合った枕に替えるだけで改善することもあります。以前よりも病気の存在が広く知られるようになったため、マウスピースや鼻腔テープなどのいびき予防用品が市販されるようになりました。しかし、汎用品ではほとんど効果が望めないといえますので、まずは病院を受診することをおすすめします。

 病院選びの際は、日本睡眠学会のホームページ(http://jssr.jp/)に掲載されている認定医療機関をおすすめします。その中には、耳鼻咽喉科や呼吸器内科、循環器内科、精神科など、さまざまな診療科の医療機関が入っており、診療科によって専門の治療が異なります。手術も視野に入れるならば耳鼻咽喉科、心臓血管系にも不安を抱えている人は循環器内科、息苦しさを感じることもある人は呼吸器内科、過眠や不眠などの睡眠障害にも悩まされている人は精神科を受診するのがいいでしょう。他に抱えている病気や病状に合わせて、診療科を選択するのがいいと思います。

週刊朝日 2013年7月26日号