神様、仏様、どうか良いご縁を――なんてお願いをしていた妙齢の女性たちが、結婚のお相手として「お坊さん」に目を付けた。僧侶とのお見合い、いわゆる“坊コン”が人気だ。清潔感のある袈裟(けさ)姿にクラッとくる女子たちが増えているらしい。婚カツ中の独身記者(♀)、さっそく“坊コン”現場に突入した。

「お坊さんとプチ婚活」とうたった真宗大谷派三条別院(新潟県三条市)のイベントに、女性からの申し込みが相次いで定員オーバーに……。そんな新聞記事を目にして、眉間にシワを寄せるFデスク。

 調べてみると、お寺の後継者不足が問題となり、これまでにも日蓮宗、高野山真言宗、浄土真宗本願寺派などで「婚活支援」の動きはあった。それでも、お寺を舞台に婚活イベントを開催するのは珍しいらしい。

 昨年は『美坊主図鑑』(廣済堂出版)が出版されて話題を集め、「坊主バー」「寺カフェ」なども賑わった。東大卒の僧侶が登場する少女漫画も人気だし、袈裟姿に“萌える”女子たちが急増中だったのだ。

 これまで多くの婚活イベントの潜入取材をしてきた記者として、うかつにもノーマークだった。ここは“坊コン”に参加して、暴飲暴食の煩悩を振り払ってくれる相手を見つけたい!

 坊コンが行われる三条別院「御坊市」のフェイスブックには、

〈「お坊さんは悟りを開いて心が広そう!」と期待するコメントもいただきました。残念ながら浄土真宗の僧侶で悟りを開いている人はいないと思いますが、自身の欲の深さには良く気付いている僧侶は多いと思います!〉

 とある。お坊さんって意外に肉食系かも……。残念ながら定員いっぱいで記者は“お見合い”には参加できなかったが、現地取材に突入した。

 当日。本堂入り口には、若い僧侶2人が立っていた。ひげを生やし、袈裟の上からでもわかるガッチリ体形。思っていたより最近のお坊さんってカッコいい。会場内で、イベントを企画した実行委員の僧侶、関根正隆さんを見つけて取材開始。そもそも、お坊さんは結婚できるんですか?

「(浄土真宗の)宗祖の親鸞聖人(しんらんしょうにん)も結婚していますからね。家庭の喜び、苦しみ、時にはケンカのなかで、人間のよいこと、悪いことを学ぶのです」

 そんな関根さんは野村萬斎似。この人なら私の煩悩を受け止めてくれそう!と思ったけれど、残念ながら既婚者だった。今回の参加者は、男女とも13人。男性はすべて新潟県内の寺の僧侶で、女性は近畿地方からの参加者も。

 女性陣が決められた席についた後、袈裟姿の20代から40代の僧侶が入場し、向かい合わせに座る。お寺という場所柄か、派手に着飾った女性はいない。僧侶たちのほうが世慣れた雰囲気だ。この宗派では“坊主頭”でなくてよいそうで、長めの髪に細い眉のミュージシャン風、日に焼けたサッカー選手風の僧侶もいる。

 開始前はとても静かで、雑談もない。見ている記者にも緊張が伝わってくる。イベントの運営をする婚活情報サービス会社「トアイリンクス」代表の伊藤ユウキさんは、「空気が少し重い」と心配顔だ。

「お坊さんとの婚活イベントを手がけるのは初めてです。お金持ちと結婚してバブルな暮らしをしたいという女性ではなく、精神世界が高そうな人、一緒にいてやわらかな雰囲気を求めている女性が集まっているのでしょう」

週刊朝日 2013年7月5日号