大手スーパーのダイエーが全国204店舗すべてで、食料品など700品目にのぼる商品の大幅値下げに踏み切った。昨年9月から始めた安売りの第5弾となる。消費者にとってはうれしいが、円安で小麦をはじめ輸入原料を使う食料品の値上げが相次ぐなか、どうして値引きできるのか。「秘密」に迫った。

 値下げはもろ刃の剣だ。値下げしただけ利益が減少するので、会社の業績が悪化するリスクをはらむ。「値下げすればある程度のインパクトになり、集客数は伸びるかもしれない。だが、長期的な戦略としては疑問」(日本総合研究所の東秀樹主席研究員)といった声も上がる。

 うがった見方だが、値下げで減少した利益の分を納入するメーカー側に負担してもらっているのだろうか。「商談がうまくいったか、いかないか。それによって価格を決めるわけではありません」(ダイエーIR広報部)。

 値下げと利益確保を両立する「秘密」は何なのか。

「ヒントは、自社で開発するPB(プライベートブランド)です」(プリモリサーチジャパン代表・流通アナリストの鈴木孝之氏)。

 PBは、メーカーが製造し、スーパーが自社ブランドとして売る商品だ。まず、大量に発注して返品しないことから製造費が安い。包装やデザインも簡素だ。そして広告費をかけず、自社の流通網に乗せて工場から店舗に直接運ぶので、卸売会社を通すよりも物流費を下げられる。

 こうしたことから、PB商品は利幅が非常に大きい。売値から原価を引いた粗利益が5割近いPB商品もあるという。有名メーカーの商品(ナショナルブランド=NB)より安く売っても、利益を稼げるのだ。

 ダイエーは、イオンのPB「トップバリュ」の売り場を増やす方針だ。「だれでも知っているNBを値下げして、たくさんのお客さんに来店してもらい、利幅の大きいPBも一緒に買ってもらう。そうすれば、全体で利益を確保できるようになります」(同)

 つまり、大々的に打ち出すNB商品の大幅値下げは、ざっくり言ってしまえば、損して得とれ、「客寄せ」のような役割もありそうだ。

週刊朝日 2013年6月21日号