バーナンキFRB議長 (c)朝日新聞社 @@写禁
バーナンキFRB議長 (c)朝日新聞社 @@写禁

 日本株の大波乱が続いている。5月23日に突如として、13年ぶりの大暴落となった。その後も「余震」は続いている。いったい何が起きたのか。

 急落の背後に浮かび上がるのは、世界の政治や経済動向を見ながら、儲かりそうな国の金融市場に向けて巨額の資金を一瞬にして動かす海外ヘッジファンドの存在である。なにしろ、東証1部の売買代金の半分以上が外国人投資家なのだ。外国人投資家の動向に詳しい三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長が解説する。

「米国の超金融緩和で世界の投資マネーが膨張した結果、ヘッジファンドは非常に巨額な運用資金を抱えています。彼らは儲けるチャンスを世界中で常に狙っており、昨年末以降、ほれ込んでいるのが日本なのです」

 金融緩和とは、日本銀行やFRB(米連邦準備制度理事会)といった国の中央銀行が世の中に流れるお金の量を増やし、企業や消費者が借金しやすくなる政策のこと。家や自動車といった高額の商品が売れやすくなり、景気が上向くことをめざす。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が4月に始めた「異次元の緩和」もそれだ。

 実際に野田佳彦前首相が「解散宣言」をした昨年11月以降、巨額の資金が日本に押し寄せている。東証によると、外国人投資家の買い越し金額(買いが売りを上回った金額)は、4月までに約10兆円に達した。

 昨年1年間でも2兆7074億円だった。それを大幅に上回る水準で日本株を買い上げ、アベ相場を引っ張ってきたのだ。藤戸氏によると、買い上げた外国人投資家のうち推定で約6割がヘッジファンドだという。それほど入れ込んだ日本株をどうして売り浴びせるのか。藤戸氏が続ける。

「きっかけはバーナンキFRB議長の発言ですよ」

 米国の金融政策の手綱を握るバーナンキ氏は大暴落の前日(米国時間)、議会証言後の議員との質疑応答のなかで、「債券購入ペースの減速を決定することもあり得る」と述べた。米国の景気が底打ちしつつあり、超金融緩和が終わりに近づいていると示唆したのだ。米国ではFRBがお金の量を絞るかもしれない。そう受け取られたわけだ。日本株を買い上げてきたヘッジファンドは、資金を引き揚げなくてはならない。

「すぐに利益を確定する売りに走ったのです。相場を押し上げた彼らが売りに回ったわけですから、急落するのも当然です」(藤戸氏)

週刊朝日 2013年6月14日号