近年、“女性向けAV”が静かなブームになっている。なかには年間1万本ものヒット作品が生まれることも。業界初の“専属男優”で女性向けAV人気の火付け役の「一徹」はこう言う。「不自然なキスはダメ。ゆっくりついばむように、唇の感触を確かめながら、ソフトにゆっくり楽しんでいく」。女性に喜ばれる気遣いが、人気の秘密なのだ。

 事実、そんな一徹の言葉に、周囲にいた女性スタッフ一同がうなずく。まさに女子会のような本音が飛び交うなかで、オンナの願望が映像化されていく。

 そのぶん、女性からの反響は大きく、長文の感想も。そこで見えてくるのは、複雑な女性の心理だ。例えば、見たいシチュエーションについてアンケートをとると、1位は「ラブラブ」、2位に「ちょっと無理やり系」。相反するけれど、これは女子ならわかる気も……。

「無理やりといっても、暴力や男性のAV感覚でのレイプものは絶対ダメ。そこに優しさが相いれないといけないんです。女性は自分がHだと認めたくないのか、やらざるをえない必然性、理由を与えてもらうのが必要みたいですね」(一徹)

 ここで男性は勘違いすることなかれ。女性にとっての「無理やり」は「強引」さで、ベースには自分への愛情や優しさがなければいけない。そして「イケメンから」が大前提。“嫌よ嫌よも……”の加減は、すべて女性に都合よくできているのです。

「男性2人に女性1人の三角関係の設定がやっぱり人気です。男性のキャラも、最初はちょっと嫌なやつだったけど、実はかわいいところもある、みたいな。『そんなやついないよ!』ってツッコミたくなるくらいファンタジーの世界。少女マンガの王道がいいんです(笑い)」(女性向けAVレーベル「シルクラボ」のプロデューサーで女性監督の牧野江里氏)

 購入者は、20代から上は60代まで、1割は男性だという。新作が出るたびに購入している会社員女性(32)はこう力説する。

「女性向けAVはシチュエーションでキュンキュン萌えさせた上にHがあるからいい。最初はこそばゆかったし、ありえないとは思いつつも、韓流ドラマと同じ感覚でハマりましたね」

 購入するハードルの低さも人気に一役買っている。シルクラボのサイトや、大手ネット通販「アマゾン」で、普通の女性が人知れず気軽に買える。「慣れてきたのか、『過激に』というリクエストもけっこう増えてきて、なかにはモザイクがないのを見たいという声も(笑い)。だから、パンツをはいた状態でのモッコリを映すようにしたんです。男性が興奮しているさまを見たいという女性も多いんです」(牧野氏)。

 オンナの願望は気まぐれな上に、底知れず、です。

週刊朝日 2013年5月31日号