女性票は相当取りそうだが(撮影/家老芳美)
女性票は相当取りそうだが(撮影/家老芳美)

 東日本大震災後、ツイッターでNHKの報道姿勢などに疑問を呈し、4月1日付で退職した元NHKアナウンサーの堀潤氏(35)。市民メディアを立ち上げ、既存メディアとの「協業」を目指すという。参院選でみんなの党からの出馬も取りざたされているなか、週刊朝日のインタビューに答えた。

「(参院選には)出ません。そもそも要請もないです(笑い)。みんなの党が目指す既得権の打破や構造改革は進めなければいけませんが、いまは党内が分裂している状況ですから。

 NHKが4月上旬に行った世論調査では、『支持政党なし』」が34.5%です。特に20代から40代前半の年代は、生活に根差し、より実行力のある、リベラルな政党を求める気持ちが非常に強い。でもその気持ちをぶつける政党がない。そのひとたちが結集して、メディアを通じて自分たちの思いをきちんと伝えられる環境づくりが必要です。私はその一つの旗振り役になりたい。それが局を辞め、新しいメディアをつくりたいと思った理由です」

 堀氏は震災から2年を迎える今年3月10日、ツイッターでこうつぶやいた。

〈原発事故発生のあの日私たちNHKはSPEEDIの存在を知りながら「精度の信頼性に欠ける」とした文部科学省の方針に沿って、自らデータを報道することを取りやめた。国民の生命、財産を守る公共放送の役割を果たさなかった。私たちの不作為を徹底的に反省し謝罪しなければならない〉

 こうした反省のもと、昨年6月、評論家の宇野常寛氏らと市民メディア「8ビットニュース」を立ち上げた。

「NHK内の支援者には『内部から改革を進めていけば』という人もいました。でも震災や原発事故に匹敵するような災害リスクが高まっているので、スピード感を持って取り組まなくてはと思いました。

 日本のマスメディアは自らを高い技能、見識に裏付けられた、『世界で唯一の専門家集団』とみなしています。しかし海外では英国ガーディアン紙が『ジャーナリストは世界で唯一の専門家ではない』と宣言しました。自分たちだけではカバーできない複雑な社会なのだから、市民のジャーナリズムへの参画が必要だという立場です。

 これまで既存のマスメディアと、市民メディアやネットメディアは対立軸としてとらえられる傾向がありました。マスメディアには蓄積してきた放送網や流通網、取材・編集技術など優れたインフラがあります。一方、スマートフォンなどが普及するなかで、市民は遭遇した事件や不条理の現場をネットを通じて情報発信できるようになっています。

 私たちが目指すのはマスメディアと市民の『懸け橋』です。協業することで情報の多様性が増し、マスメディアの信頼性の底上げにつながると考えています。

 ただ既存メディアは放送法、電波法など法律による規制を受けています。変革するためには法や制度設計を変える必要も出てくるでしょう。そのとき私が政治の世界にかかわっていくこともあると思います」

週刊朝日 2013年5月3・10日号