2013年2月、ロシアに隕石が落ちて1000人以上の負傷者を出した。生物学者の池田清彦氏は大きな小惑星がぶつかれば、本当に世界の終わりは突然に来ると思ったそうだ。理由はこうだ。

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 ユカタン半島のチクシュルーブという村に直径約200キロメートルのクレーターがあり、これは白亜紀末の小惑星の衝突跡だと考えられている。落ちてきた小惑星は直径が10~15キロメートル、これにより生じた地震の規模はマグニチュード11以上と推定されている。放出されたエネルギーは先の東日本大震災を引き起こした地震の数万倍、広島型原爆10億倍、津波の高さは300~400メートル、一説には1000メートルに達したと言われている。

 確かにこんな大きさの小惑星が衝突したら地球上の人口の大半は失われそうだ。東京、ニューヨーク、ロンドンなどの平地の大都市は全滅。日本だったら軽井沢や日光などの標高の高い地域だけがかろうじて被害を免れるだろうが、9割以上の国民は死滅するに違いない。

 生き残った人とてインフラがほぼすべて失われれば、どう暮らしていいか分からず、地獄が待っているはずだ。何とかなりそうなのはニューギニアやアンデスの高地などで自給自足をしている人たちだけだろう。それとても気候不順により食糧確保がままならないかもしれない。

 個人の一生は儚く、地球の歴史に比べれば人類の一生も儚いのだろう。地球の一生ですら悠久の宇宙の歴史に比べれば儚いに違いない。宇宙だってもしかしたら儚いのかもしれないではないか。私は別に絶望しているわけではありませんよ。全てが儚いのは絶望ではなく、大いなる希望なのだから。

週刊朝日 2013年3月29日号