日米首脳会談を終え、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に実質参加表明をした安倍晋三首相(58)は反対派を蹴散らし、「勝ち組街道」まっしぐらだ。また反対派の「熱源地帯」であるJAにしても、この「プチ政局」は決して損な話ではないようだ。TPP問題で久々に存在感を示し、夏の参院選前に結束できると見られているからだ。

 2004年参院選では元農水官僚が比例区で立候補したものの、12万票で落選。07年に全国農業協同組合中央会(JA全中)専務理事の山田俊男氏(66)が立候補すると、自民党内2位の45万票を獲得し、「選挙に強い農協」を改めてアピールした。

「前回より票を増やし、自民の比例区候補の中で1位になるのが目標」(JA関係者)

 また農林族やJAが考える真の勝負どころは「関税廃止もしくは引き下げ後の農家への補償」だとの見方は根強い。

 1990年代、ガット・ウルグアイ・ラウンドでコメの輸入を決定した際、対策費として計6兆円の予算がついた。改選期を迎えた、首相に近い参院議員はこう明かす。

「先日、選挙に向けて地元農協と政策について話し合った。最初は『TPP断固阻止』と選挙チラシに書いてほしいと言われたけど、最終的に『断固反対』という文言になった。阻止なんてできないとわかっているから、拍子抜けするぐらいすんなり受け入れてくれた。そのかわり『安倍さんによろしく』という雰囲気をヒシヒシと感じた」

 90年代にばらまかれた6兆円のほとんどは公共事業に消え、農家の体質改善には役立たなかった。歴史の教訓を忘れてはならない。

週刊朝日 2013年3月15日号