薄型テレビで価格競争を強いられ、韓国勢の後塵を拝した日本の家電メーカー。その劣勢を巻き返す「戦略商品」として政府も意気軒高なのが次世代の高精細な4Kテレビだ。今度こそ、ものづくりの「切り札」となれるか。

「薄型テレビの価格競争で日本のメーカーが得た『教訓』は、下のクラスから上級クラスまで価格差がなくなったこと。4Kテレビの投入に際して、持っていることが数年間はステータスになるような商品を高所得の人に買ってもらうため、商品構成の再構築を考えているのです」(ITジャーナリストの西田宗千佳氏)

 クルマでいえば、軽自動車から超高級車まで、価格別に豊富な品ぞろえがある。これをイメージすればいいだろうか。もちろん、技術面で海外勢を引き離すこともクルマと同様に求められる。4Kでは、パナソニックとソニーが50型を超える大型の有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビの量産化技術を共同開発している。

「まったく新しい技術で、生産コストを含め海外メーカーが追いつくには最低でも3~5年はかかる」(西田氏)と言われる。

 有機ELは、電気を通すと赤、青、緑の3色に発光する材料を膜のようにガラス基板に付着させ、光の組み合わせで映像を表示する技術。液晶と比べ大幅に薄型化でき、曲げて使うこともできる特徴がある。いわば「曲がるテレビ」だ。

「手術の模様を精密に映し出すなどの医療用、旅客機用、大型の屋外広告などの分野への展開が考えられます」(パナソニック広報)

 対応する番組が始まれば4Kテレビの需要喚起につながるのはたしかだ。しかし、デジタルAVは「世界初」の技術であろうと、それほど間を置かず海外メーカーに追いつかれてしまう宿命にある。

週刊朝日 2013年3月1日号