ソニーの4K対応テレビ「BRAVIA」(撮影/dot.編集部・北元均)
ソニーの4K対応テレビ「BRAVIA」(撮影/dot.編集部・北元均)

 日本政府が「戦略商品」と前のめりになる4Kテレビ。約800万画素で解像度はフルHD(ハイビジョン)の4倍と、今年1月、米国ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市CESでも注目の的となった。日本メーカーも海外勢に先駆け、4Kテレビを発売している。東芝が11年12月に55型を、ソニーが昨年11月に84型をそれぞれ送り出した。

 その4Kテレビ放送を“国家戦略”として普及させようというのだから、11年7月の地上デジタル放送移行に伴う“特需”の反動で販売不振に陥っている家電メーカーにとってはまさに“救世主”――。

 だが、ある民放関係者は冷めた見方をする。

「テレビ局の最大の課題は『テレビ離れ』をいかに食い止めるかにある。特に中高年層は野球中継や時代劇が地上波であまり放送されなくなったので、CS(通信衛星)放送などに加入するようになった」

 4Kの高画質であっても見てもらえない番組を作るより、低画質でも見てもらえる番組を作るほうが先決だというわけだ。

 投資家の見方も冷淡だ。BNPパリバ証券チーフクレジットアナリストの中空麻奈氏が指摘する。

「解像度が高いテレビといっても、みんなが欲しがるものでしょうか。海外メーカーも相次いで製品投入しますから、価格はすぐに下がると思います。家電メーカーの収益性を立て直せるほどのものかというと、投資家も格付け機関も疑問視しています」

 つまり、液晶など薄型テレビの「二の舞い」を心配しているわけだ。薄型では韓国メーカーなどが安価でデザイン性に優れた商品を発売。日本勢が先頭に立ってからあっという間に、価格競争に突入した。

週刊朝日 2013年3月1日号