福島第一原発周辺での「手抜き除染」問題が案の定、うやむやにされそうになっている。年明けの朝日新聞報道で発覚して以来、環境省は除染作業を受注するゼネコン4社に調査を指示したが、彼らが“手抜き”と認めたのは、わずか3件のみ。報道で指摘された、作業員らが落ち葉を川に捨てたことや、川で手などを洗ったことについては「事実はなかった」と頑なに否定している。

 だが、週刊朝日は、現場を請け負う鹿島などのゼネコンの共同企業体(JV)の担当者が、現場作業員に聞き取り調査をした際の録音テープを入手した。そこには、作業員の指摘をもみ消すかのような、衝撃の会話が収められていた。以下、録音をもとに会話の一部を再構成する。

 作業員A(以下A):私も、川に枯れ葉を流しているのを見た。ああいうのは良くないと思う。

 鹿島JV担当者(以下J):川の水量が少なくて、実際には枯れ葉を落としても流れていかないはずだ。たまたま捨てているように見えただけじゃないか。

A:私は、ちゃんと見た。(流れなければいいというのならば)落ち葉が川に入っても、放射性物質は水に溶けないというのか。

J:乾いている落ち葉にはもう放射線がない。落葉樹の葉っぱは事故当時、まだ枝についていなかった。

A:では、放射線はまったくないというのか。

J:(地表の)上のほうはない。下のほうは腐葉土にセシウムがくっついている。それに(たとえ流したとしても)、水中にセシウムは出ない。下(川底)の土に、くっつくようになっている。だから川には溶けていない。

A:じゃあ、(落ち葉を流しても)まったく問題はないのか。

J:せっかく集めた物を捨てているとしたら問題だけど、捨てる労力のほうが大変だと思う。

 1月11日までに鹿島JVが環境省に提出した報告書では、枯れ葉を川に流したとされる事例について、作業責任者は「絶対にしていない」と答えたとされる。だが現実には、「枯れ葉を(川に)流しているのを見た」と証言する作業員がいたにもかかわらず、報告書に反映していなかったのだ。これでは、調査そのものに疑問を抱かざるをえない。

週刊朝日 2013年2月8日号