大手プラント建設会社・日揮(本社・横浜市)の社員も巻き込まれたアルジェリアの人質事件。事件の首謀者とみられるモフタル・ベルモフタル司令官(40)はアルジェリア出身で、1990年代初頭にアフガニスタンの紛争で戦闘に参加した経歴を持つとされる。国際テロ組織アルカイダのビンラディン容疑者とも接触を重ね、「息子」を自称するようになったという。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏によれば、ベルモフタル氏は、この地域では有名な存在だという。19歳のときにアフガンの軍事キャンプに入って訓練を受け、帰国後にアフガン帰りの人が始めた武装集団に参加したそうだ。

「まだ若いが、キャリアが長いので顔役になっていった。当時所属していた組織の『親分』 の言うことを聞かなくなって、一派を率いて飛び出したのが昨年10月ごろと言われています」

 軍事訓練か戦闘か、原因は定かではないが、左目は失明した。思想的には急進的なイスラム過激派である一方、別の顔もあるという。

「サハラ砂漠南部のアルジェリア、マリなどの国境地帯で、山賊の親分のようなことをしている。麻薬も売買していると言われる」

 そして、黒井氏は、もっとも有名な「ビジネス」は、たばこだと言う。「税金を払わずに国境を抜けて売ってひと稼ぎしたので、『ミスター・マールボロ』とも呼ばれる。ヨーロッパ人を誘拐して身代金を取るのも、本格的な生業の一つ。こうした『事業』で資金を蓄え、組織内でも発言力を増していったようです」。

 ベルモフタル氏は2003年にもサハラ砂漠でドイツ人やスイス人などの外国人旅行者31人を誘拐し、約60億円とも言われる巨額の身代金を得た「成功体験」があるという。

週刊朝日 2013年2月1日号