再稼働問題で揺れる全国各地の原発。実はその燃料であるウランは、海外からの輸入に頼っており、燃え残りのウランを再び燃料とする「核燃料サイクル」計画も頓挫した状態にあるという。原発の今後を、ニュースキャスターの辛坊治郎氏は次のように話す。

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 先日、某電力会社の技術者に聞いてみた。「核燃料サイクルが実現できない場合、核燃料を輸入し続けなくてはいけませんが、世界のウランの埋蔵量は何年分あるんですか?」

 答えは「およそ100年」だそうだ。中国等で猛スピードで新規の原発が建設されているのを見ると、近い将来、ウラン資源の争奪戦が起きるのは目に見えている。その場合、さらにその年限は短くなるだろう。

 さらに聞いてみた。「核燃料サイクル技術が完成したとして、それによって何年ウラン資源の枯渇時期を延ばすことができますか?」

 技術者は少し考えて、「20倍、あるいは30倍になると思います」。

 しかし、日本の原子力発電所をフル稼働したとき生まれる放射性廃棄物は毎年1千トンに及ぶ。そこから2%ほどの使えるウランとプルトニウムを抽出できるようになったとしても、残る核のゴミは少なくとも数万年にわたって危険な放射線を出し続ける。アメリシウム243が半分になるのに要する時間は7370年、キュリウム247に至っては1560万年もかかる。核燃料サイクルが成功して数千年、通常の原発だけならわずか100年で燃料ウランは枯渇する。そんな「短時間」のエネルギーを得るために、そのツケを10万年後の未来まで回すことが、果たしてこの星に生きる者として許されるのか?

週刊朝日 2013年1月4・11日号