「ちょっと待って」と叫んでももう遅い。有権者の審判は下り、民主党の大物たちは次々と落選した。一方、“鉄板ネタ”で首の皮がつながったのが、広島6区の亀井静香氏(76)だ。2005年の郵政選挙でホリエモンこと堀江貴文氏を制した盤石な地盤を持つ亀井氏だったが、今回の危機感は相当なものだった。

「“亀井信者”の高齢化とともに、都市部での票が集まらなくなってきた。『出馬を取りやめたほうがいい』という声も出たほど」(地元政界関係者)

 個人演説会は、お決まりのこの台詞から始まる。

「私は幸せ者です! 雨の日も、曇りの日も、嵐の日も、私ごとき者を支持していただき、(国会に)お送りいただきました! 貧乏な農家の4人きょうだいの末っ子です。親父、お袋の寝た姿を見たことがありません!!」

 薄くなった髪を振り乱し、ツバを飛ばしてマイクを握り続けた。

 浪花節とわかっていても、有権者にはじわりと効いたようだ。運命の日、万歳三唱を叫ぶいつものダミ声が涙で震えていた。

週刊朝日 2012年12月28日号