東京都に住む主婦、森田孝子さん(仮名)はいまから5年前、自分が住む区の骨粗鬆症検診を受けた。検診を実施していることは知っていたが、自分には関係ないものだと思っていた。しかし周囲の助言もあり、60歳の節目にやっとその気になったという。

 検査の結果は「要精密検査」で、骨の強度を表す骨量・骨密度が不足しているということだった。「まったく自覚症状はなかったので半信半疑でした」と、森田さんは言うが知人の紹介で虎の門病院の内分泌センターを受診した。森田さんを担当した同センター部長の竹内靖博医師は言う。

「骨密度はカルシウムの含有量で計測します。YAM値とは骨密度の『若年成人平均値』のことで、森田さんは来院時の検査で腕の骨密度がYAM値の58%、腰椎(ようつい)が60%でした。YAM値の70%未満でほかに特別な病気がなければ、骨粗鬆症と診断されます。痛みなどの症状がない場合、健康診断に含まれている骨粗鬆症検診を受けて見つかった、という人が大半です。また、身長が低下していたり、ほかの病気でX線検査をした際に見つかったりということもあります」

 骨粗鬆症は、全身的に骨の強度が低下し骨折しやすくなった状態のことをいい、その結果として骨折などの症状が出る。折れやすい部位は、まず胸腰椎、そして大腿骨や腕である。

「骨粗鬆症による『骨折しやすい状態』というのは、一般的には立った状態から倒れて骨折するような場合です。これを『脆弱性骨折』といい、階段から落ちて折れたというような、通常の『外傷性骨折』と区別します」(竹内医師)

週刊朝日 2012年11月23日号