ハイブリッド車のコンセプトカーを紹介するトヨタの豊田章男社長。反日デモ以降、中国での日本車の販売は激減(今年4月、北京国際モーターショー) (c)朝日新聞社 @@写禁
ハイブリッド車のコンセプトカーを紹介するトヨタの豊田章男社長。反日デモ以降、中国での日本車の販売は激減(今年4月、北京国際モーターショー) (c)朝日新聞社 @@写禁

 ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、欧米各国が採用している自動車のエンジン小型化が世界標準になっていることを指摘。消費者のニーズをつかまなければ日本の最後の生命線とも言える自動車産業もガラパゴス化してしまうと話す。

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 欧米各国の自動車メーカーが選んだ道は、小排気量のエンジンに複数の過給機をつけることだった。過給機とは、多くの空気を燃焼室内に送り込んで出力を上げる装置で、エンジンの回転を利用する方式と排気の流れを利用する方式があり、共にかつては車速を上げるために使われていた。これが現在では、燃費向上の主役となり、車のサイズに比して「超」がつくほど小さなエンジンを必要な時だけ高回転させるのが、世界標準になっているのだ。

 これに対して日本の自動車メーカーは燃費向上の方法として、エンジンの余力で充電したバッテリーを使ってモーターを回す方式を切り札にしているように見える。私自身、そのハイブリッド車に乗ってすでに5年、性能の良さはよく理解している。しかし問題は、日本のメーカーが、「世界の消費者が何を望んでいるか」を見失い始めていないかという点だ。ハイブリッド車には大きなバッテリーが必要で、車は重たく、価格は高くなる。また、エンジンとモーターの制御は複雑で、新興国の修理工場ではシステム全体がブラックボックス化してしまう。

 イタリア車ですら壊れない時代に、「高性能で壊れない」というだけでは、とても世界で勝負できない。自動車産業が「ガラパゴス化」したら、日本の将来は絶望だろう

(週刊朝日2012年11月16日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)

週刊朝日 2012年11月16日号