投資助言会社「フジマキ・ジャパン」代表の藤巻健史氏は、1982年に英国に赴任。そのころの英国は若者にも町にも覇気はなく、「この国は滅びていくのだ」と思っていたという。そこへサッチャー首相が出現し、「一人のリーダーの力で国は劇的に変わる」と実感したそうだ。現在、接戦が繰り広げられている米大統領選について藤巻氏がこう語る。

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 日本の場合、選挙とは、「誰が勝つかの1日限りのドラマ」としての存在価値しかない、と思えてならない。マスコミも投票自体をお祭り化しているだけで、「誰が勝つと、どういう国になるか」には興味がないようにも思える。逆に言えば、サッチャーのようなリーダーが見当たらないので、誰がなっても、この国は変わらないとあきらめているのかもしれない。

 ところが、きたる米国の大統領選挙は、そうではない。米国、ひいては世界の経済に大きな影響を与えるし、それなりに選挙民は考えているようにも見える。対立軸は明確である。大きな政府(民主党)vs.小さな政府(共和党)である。よい例は、医療の皆保険を目指すオバマ民主党と、それは財政の悪化を招くと反対の共和党の激突である。

 私は、日本はもちろんのこと、米国でも大きな政府では、いずれ財政が持たなくなると思っている。その意味で、個人的には、世界経済のために共和党が政権を取ってほしい。ただ米国は日本ほどのポピュリズム政治にはなっていない点は救いだ。そして何よりも心強いのは大統領選と同時に行われる選挙で下院共和党が圧勝しそうなことだ。大統領が大きな政府を志向しても歯止め役になるだろう。その意味では大統領選の結果だけでなく、同時選挙の上院・下院の結果にも注目したいものだ。

週刊朝日 2012年11月9日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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