糖尿病治療には、いまだ多くの人が誤った認識を持っている一面がある。そのため、患者にもからだの仕組みや治療法を学び、柔軟に対応することが求められる。新山手病院生活習慣病センター長の宮崎滋(みやざき・しげる)医師に話を聞いた。

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 糖尿病は、インスリンをつくる細胞が破壊され、インスリンがつくられない1型糖尿病と、インスリンの分泌量が不足する「分泌不全型」やインスリンはつくられても効かない「抵抗型」の2型糖尿病に分類されます。1型は全体の5%以下で、残りは2型です。薬物治療では、「分泌不全型」はインスリンをつくらせる経口薬を、「抵抗型」は効きを良くする経口薬を使用します。

 それでも、改善しない場合、膵臓(すいぞう)に働きかけてインスリンを分泌させるGLP-1注射を実施します。膵臓の働きやインスリンをつくる力が残っている人に採用できる方法です。低血糖が起きにくい、太りにくいといった利点があります。インスリン注射ほどの強い効果はないため、血糖値が高すぎる場合には実施しません。また、吐き気などが5~10%の人に起こるといわれますが、徐々に軽減します。

 血糖値が高くなりインスリンの分泌が低下することを糖毒性といい、これがあるとインスリン治療を開始します。この10年で治療に対する考え方は「一生インスリンを注射しなくてすむよう、早期に活用する」という方向へ転換しました。糖毒性がなくなれば、この注射を卒業できます。ただし、厳密に開始時期が定義されていないため、医師の方針によって差があるのが現状です。血糖値を下げる強い効果がある一方で、低血糖になる可能性もあるため、適切な使用が大切です。

週刊朝日 2012年11月2日号