野田政権が皇室典範の見直しに向けた「論点整理」を発表した。女性皇族結婚後も皇籍にとどまる「女性宮家」創設案と、皇籍を離れて国家公務員として皇室活動を続けるという2案を提示する内容だ。ジャーナリストの田原総一朗氏は、「論点整理」しかできない現状を打破すべきだと主張している。

*  *  *

 私は、女系天皇を認めるべきだと主張しているわけではない。天皇の存在は、世界に誇るべき日本の伝統だと考えている。権力と権威が一元化していないことが、日本が安定しているゆえんだと捉えている。

 かつて、源頼朝、足利尊氏、豊臣秀吉、徳川家康など天下を取った権力者たちがいたが、誰も天皇を亡きものにしようとは考えなかった。

 何より、京都の御所には高い石垣も堀もない。よくこれで皇室が現代まで続いたものだと改めて感心するが、日本人にとって天皇とはそういう不可侵の存在なのだ。

 だからこそ、日本は政権がコロコロ変わっても、どうにか安定していられるのである。

 その天皇制を将来も持続させていくことを第一に考えるべきだ。その点では、保守右派の人々と私は、ほとんど差がないと思う。

 いまこそ、国民が皇室問題について、大いに論議するべき時だ。

週刊朝日 2012年10月26日号

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら