厳しい食事制限をしてはストレスでリバウンドし、激しい運動をしては体を壊す。エステにサプリ、いろいろ試したけど、やせられない! という人に叫ぶ詩人ことドリアン助川さん(50)が提唱するのが、詩を読むだけの朗読ダイエットだ。

 食べるのもお酒を飲むのも大好き。そんな“宴会中年”だったドリアンさんが、朗読の思わぬ効果に気づいたのは3年前のこと。もっと歌がうまくなりたい、と始めたボイストレーニングがきっかけだった。

 人の心に届く声を出すために心掛けたのは「腹式呼吸」。肋骨を広げるのではなく、横隔膜を上下させて肺を膨らませたり縮めたりする呼吸法のことだ。

 トレーニングを始めると、不思議なことが起きた。徐々に体調が良くなり、腹筋が割れて体形や顔つきも引き締まってきたのだ。身長1メートル82センチで体重は85キロだったが、1年後には10キロ減の75キロになったという。

「朗読ダイエット」では朝晩、三つの基本トレーニング(ひねりのストレッチ、5分間の腹式呼吸、3分間のドッグブレス)と、毎日1時間の朗読とを行う。

 どんな本を読んでもいいが、ドリアンさんが勧めるのは名作の短編集だ。

「たとえば、芥川龍之介や梶井基次郎、モーパッサンの短編集を毎日1編ずつ読んでいくのです。継続するために、読んでいて自分が気持ちよくなれる本を選んでください」

 このダイエットを実践した群馬県の37歳男性・ジャイアンさん(仮名)は半年で39キロの減量に成功し、現在111キロ。「今回、チャレンジしたのは、ドリアンさんの大ファンだったことと、失敗続きのダイエットにけりをつけて、前向きに生きていきたいと思ったからです」と話す。また、「朗読という、減量以外に集中できる楽しみを持てたからだと思います。新しい世界が開けた気がします」ともいう。

週刊朝日 2012年10月12日号