ついに旗揚げとなった橋下新党「日本維新の会」。その政策方針などが盛り込まれている「維新八策」について、中央大法科大学院教授(財政学)の森信茂樹氏に聞いたところ、「負の所得税(努力に応じた所得)・ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入」「超簡素な税制=フラットタックス化」など評価できる点もあるとした一方で、「もう一つの目玉」については次のように述べる。

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 もう一つの目玉は、道州制と絡んだ「地方交付税の廃止」と「消費税の地方税化と地方間財政調整制度」です。各地方がきめ細かい行政サービスを提供するには、地方にできることは地方に任せたほうがいい。地方交付税を減らし、地方間で税収を水平的に調整していくことにも、大いに賛成です。問題は、実現できるのか。

 2008年度の税制改正で、地方法人特別税が導入されました。法人事業税の半分を国税として集め、人口や従業者数などをもとに再配分するというものです。地方間の税収格差を是正するための措置で、当然のことながら、企業が多い東京都や大阪府、神奈川県などは減収になりました。

 09年12月、大阪府知事だった橋下氏は、石原慎太郎東京都知事らと一緒に、〈受益と負担という税の原則に反し、地方分権改革に逆行するものである〉という共同声明文を発表しました。

 要するに、橋下氏はかつて自分が反対したことをやろうとしているわけです。しかし、税収の多い東京都から、賛成を取り付けるのは難しいでしょう。

※週刊朝日 2012年9月28日号