野田佳彦首相が「政治生命をかける」としていた消費増税法が、民自公の"野合"で成立した。国民の負担は増す一方なのに、「国土強靭(きょうじん)化基本法案」を自民党が提出した。元通産省官僚で慶応大学大学院の岸博幸教授が、この事態に苦言を呈する。

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 自民党は今国会に、10年間で200兆円の公共事業費をつぎ込む「国土強靭化基本法案」を提出し、公明党も7月に、10年間で100兆円を道路整備などに充てる計画をぶち上げた。消費増税で生まれる財源をいかに分捕って公共事業に回すか。政治の大勢はすでに、そんな「ばらまきモード」に入っている。これでは増税がさらなるばらまきを生むだけで、社会保障の安定化も財政再建もことごとく失敗に終わるだろう。

 そもそも、「無駄を削る」と言っていた民主党自身も、2009年に政権を奪取して以来、途方もないばらまきを続けてきた。

 このまま衆院選に突入すると、今度は自民党が勝利を収める可能性が高い。そうなると「国土強靭化」という時代錯誤的なばらまきが実行に移されるので、財政規模はますます膨らむ。これでは、いつまでたっても財政再建なんてできるはずはない。

 加えて言えば、霞が関も予算が増えることを喜んでいる。7月末に閣議決定された野田政権の日本再生戦略は、120ページもある冊子に各省庁が自分たちがやりたい政策を押し込み、来年度予算での予算獲得が主目的となっている。消費増税で税収が増えることを見越し、政治家は公共事業のばらまきを目指し、官僚は予算増に血道を上げている。

※週刊朝日 2012年9月7日号